ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
「…なに?アッシュ、大事な話?」
「ああ……エイジ、
お前は足でまといだ。だから日本へ帰れ」
「え……?今なんて言ったんだい…ごめん、よく聞き取れなくて…」
「足でまといだって言ったんだよ、日本へ帰れ」
「ーー…」
デカい目を見開いて、言葉の意味を咀嚼している。段々と傷付いたような表情に移り変わる。
これ以上こいつを危険な目に遭わせる必要はない、だって元々は…俺たちとは無関係なのだから。
安全なお前の国に戻れ、それは本心なのに俺の心も今酷く痛む。
他人だった俺たちが出会い…共に過ごして…様々な出来事を共有していくうちに、いつの間にか他人ではなくなっていた。
「…キミにそう言われると、返す言葉がないな…」
「……」
「確かに僕は、自分で自分の身も守れないし…キミの足を引っ張ってばかりだったね…迷惑ばっかりかけて……」
「そんなことねえよ、お前は俺たちやスキップを助けてくれただろ」
「ああ…あのこと………でもあれは…」
「俺は、…俺たちは、なんの代償もなく他人に助けてもらった経験があまりないのさ。俺たちを昔ケープコッドから逃がしてくれたヤツがいたくらいで……俺たちを食わしてくれたり、寝場所を与えてくれたヤツは必ず見返りを欲求した、たとえば…セックスとかな」
「……!」
「俺が銃を持ち腕を磨くようになったのは…そうしなければ生きていけなかったからだ。あいつを守るために、自分を守るために。…銃など持たずに生きていけるならそれにこしたことはない。お前と俺たちとでは、住む世界が違いすぎる」
「……っ……わかったよ」
震える声でエイジはそう言うと、俺の視線から逃れるように赤い夕陽に体を向けた。
「…でももう少し、考える時間をくれないかな…気持ちの整理がつかなくて……」
「いいさ、お前は俺のできないことができる…だからおあいこさ」
エイジを残し元いた部屋に戻ると、オッサン2人は心配そうに俺のことを見ていた。
「あんたの出番だぜ」
「…すまない、アッシュ」
「……1本貸しだな」
俺はそのままキッチンに向かい、ウイスキーのボトルに口をつけ煽った。