ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《ショーターside》
蒼すぎる空を眺めて、俺は何をしているのだろうと考えた。
これからどうするべきか、今何をすべきか…。
「…スウルーになにか作らせましょうか?」
突然背後から聞こえる声に、眉がピクリと動く。
「それとも“お茶”をお持ちしましょうか……うわっ!」
気がつくと、俺はそいつを壁に押しやっていた。
「な、なにを…っ!」
「いいからこい!」
いかにもお坊ちゃまというような白いセーターを掴みあげ、サングラス越しにキツく睨みつける。
「お前一体何者だ!!ドースンの息子だなんて大嘘だろ!」
「そんな…っ、嘘なんて…」
「あぁ゛?!ソニーは李華龍に脅されてた、ヤツが調べたお前の身元はあてにならねえ!!」
「……」
「言え!キサマは何かを知ってるはずだ!…“月龍”ってのは誰だ!?お前はヤツの手先か!?早く言え!!」
ふとヤツが首を背けた瞬間
「!」
細い首筋に長い髪でずっと隠れていた章が見えた。
「…それは、李一族の紋章……まさか、おまえ」
「……」
怯えるような目から、挑戦的な目に移り変わる。
「お前が、月龍か!?」
俺がそういうと、クルリと長い髪を翻し首筋を隠して距離を取った。
妖しげに笑う姿に俺は何も言えなくなった。
そして、ついてこいと言わんばかりの目を向けられ、とある部屋に入った。
「これからは僕の指示に従ってもらう。僕の命令は兄の命令と思うがいい…」
「…お前みたいな子供だなんてな」
「NYの李王龍は我々の長兄だ。僕は彼から数えて7番目の末子…」
「え?」
「父には息子が6人しかいないはず…といいたいんだろ?」
フッと指に息を吹きかける。
「ああ」
「支配者の一族には血なまぐさい歴史が付きまとうものなのさ、繁栄の影の流血はいわば光に付きまとう闇…僕はその闇を支配するよう定められたものだ。だから闇をつかさどる月の名が与えられた…なぜ兄がわざわざ僕を送り込んだのかがわかったよ。アッシュ・リンクス…なるほど手強いやつだ」
ガチャ
ヤツが部屋を出ていったのがわかるのに、足が棒のように動かねえ。
「…………ッ」
なあ、アッシュ……
俺は一体…どうすればいい?