ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュ side》
次の日の朝から、俺とマックスはパソコンのある部屋であーでもない、こーでもないとそれぞれ資料を読み漁っていた。
俺はパソコン内のフォルダを片っ端から開いたが、それらしいものは何も見つからない。
「だいたい見たけど…もう隠しファイルや暗号化されたファイルはないみたいだ…。そっちはどうだ?」
「薬学的な分析データはサッパリだが、記録は10年以上前に遡ってる。グリフの事件も含めてな」
「………」
「さらにその前後に同じような兵士の連続薬物中毒死が起きてる…その解剖所見まで記録されてやがったよ。こうなると…全く別の絵が見えてくる」
「…軍関与の可能性、だろ?」
「っ…気づいたんだな、お前も」
「当然だろ?ハッキングしたのは俺だぜ?…でもこれでディノと対等に取引ができるってわけだ」
「よせ!これ以上首を突っ込むな!下手すりゃ国家レベルのスキャンダルなんだぞ!」
「だからこそじゃねえか」
「馬鹿!」
俺の言葉に被せるようにそう言い立ち上がるオッサン。
「もう個人の復讐だののレベルじゃないんだ!」
「なんだよオッサン、ビビってんのか?」
「……茶化すな。お前だって分かってるはずだぞ」
「…ああ、本当なら俺の手に負える代物じゃない。でもどうしてもケリをつけなきゃならないんだ。殺されたスキップや兄貴のこと…それに俺とユウコが自由になるために。そうじゃなきゃ…俺は…」
「だめだ!」
「なにィ?!」
「お前は捨て身でぶつかる気らしいが、そんなものはただの犬死だ。なぜ分からん!それともわかっててやる気なら、力づくでも止める」
「…アンタにできんのか!」
「お前刑務所で言ったな…、兄貴を見捨てた俺を殺すと。いいだろう、だが俺もタダでは死なねえぞ」
「……………」
睨み合い、
どちらが胸ぐらを掴んでもおかしくない空気感の中、
「ショーターが帰ってきたよ!」
エイジの嬉しそうな声でその空気が僅かに緩んだ。
「…この件は他の連中には秘密だ、ユウコにもな」
「……わかってるよ」
ガチャ
「アッシュ?…どうしたの、2人とも」
「…なんでもない、今行くよ」
俺は手早くパソコンをシャットダウンさせた。