ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
カタカタカタカタ…
キーボードを入力する音だけが部屋に響く。
よし、ここまでくればもう少し、なはずだ。
「ーーーッ!」
突然背後に気配がして勢いよく振り返る。
「あ…よかったらお茶を…と思って。ごめんなさい、びっくりさせましたか?」
「うしろから近づかれるのって好きじゃないのさ……育ちが悪いもんでね。それにしても、お坊ちゃま自らお茶を入れてくださるなんて感激だな」
「スウルーはもう休ませました、彼女は老齢なので。いかがです?ジャスミン茶です、疲れがとれますよ」
「…あんた、」
「え?」
「足音を立てないんだな」
「…どういう意味です?」
「べつに、言葉の通りの意味だけど?」
「それは…教育の違いでしょう。私たち中国人は幼い時から静かに動くようしつけられますから」
「へえ?そういうもんかい。ショーターはドタバタそりゃーやかましいぜ…?同じ中国人でも随分違うもんだな」
「……ログイン、できたんですか?」
「シールドクラックでクラッキングした。こいつで起動したらパスワードなんて意味ねえよ」
「すごいですね…!それで、なにかわかりましたか?」
「暗号化されたドライブがあって今解読中だ。もっと早いGPUがほしいな」
「見てていいですか?」
「どうぞ。あんたの家だしな」
その時、ふと背後に気配を感じた。
…これはよく知るものだ。
ユウコ、そしてエイジ。
「どう?」
「…まあ見てなって」
カタッとEnterを押すと解読された中身が一斉に流れ出す。
「な?」
『わあ!すごい!』
「ほんとだ!キミは天才だね!」
嬉しそうに笑うエイジとハイタッチする。
“BANANA FISH”
検索タブにそう入力し、マックスとイベを呼ぶように声をかける。
「バナナフィッシュというのは、なんなのです?」
「俺たちも知りたいのさ」
表示された画面にハッとする。
「なにか分かったのか?アッシュ」
「………違う!」
「え?」
「俺たちは間違ってた…バナナフィッシュは人間じゃない…!こいつはバナナフィッシュの分析表だ、主なものはサイクロビン、リゼルジックアシッド、ジルチルアミド…。バナナフィッシュはあのカプセルの中の薬物そのものだったんだ」