ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
案内され部屋に入ると、そこは何かを物色したようにとっちらかっていた。
「…ひでえな。警察には?」
「届けました…でも数人警官が来ただけで」
「……心細かったろうなぁ、お父さんは行方不明だし…」
エイジは心から心配してそう言ったが、俺には何から何まで不自然に感じられた。例えば不必要に切り裂かれたソファ、部屋を物色したってんならわざわざ切りつけるのはおかしい。それにそこら中をひっくり返したくせに、綺麗なまま残るパソコン。
「…なんか変だよな…」
「そういやユーシス…だったか、きみ親父さんがどこいったか、心当たりは?」
「…あの、一体何があったんです?あなた方はどういう…」
「ああ…それは、その……」
「なあ、こいつの中見ていいか?」
「え?あ…はい」
「おまえ、なにすんだ?」
「こいつから何か情報が引き出せないかと思ってさ」
パソコンの前に座り電源を入れると、オッサンたちが驚いたように俺を見た。
「…なんだよ?」
「お、おまえ…コンピューターが扱えるのか?!」
「「扱えないの!?」」
思わずエイジと言葉が被る。
「…インテリの不良少年なんてアリかよ…!」
「キミもこういうの得意なのかい?」
『あーううん…私は全然わからないんだ。アッシュは昔から何でもすぐにできたけど、私はバカで…』
「そんなことないだろ、おまえもあの時ちゃんと教わってりゃきっとできたよ」
『……ははは』
「…それにしても、これだけ書斎を引っかきまわしてるのに誰もこいつに触ったあとがないってのも不思議だよな?」
「……どういう意味です?」
「“プロ”ならこいつを見逃すはずはない…うまくすれば情報の宝庫なんだ。もっとも、そこのオッサン方みたいだってんなら話は別だけど」
「なんだとォ!?」
反応を見るためにわざと俺が口にした話を、このユーシスってやつはさして表情も変えずに聞いていた。
「…………」
…やっぱり妙なヤツだな。
「みなさま、お食事の用意が出来ておりますが…」
「スウルー、今行くよ」
そう言ってあいつが部屋を出ていったのを見計らって、俺はショーターに声をかけた。
「…ショーター、あいつ調べられるか?」
「なにか気になるのか?」
「わからない…しいて言えば、
ーー静かすぎることかな…」