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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第20章 Los Angeles


《アッシュside》

角を曲がると、へたり込む婆さんが見えた。

「だ…だれかたすけて…」

近くに誰かいるのか?
俺は駆け寄り、銃を構える。

『何があったんですか?!』
「おい!大丈夫か!?」

「坊っちゃまが拐われて…」


耳を澄ますと微かに男どもの声が聞こえた。

「…あっちだ!」

また先の角を曲がると、そいつらはまさに人を担いで立ち去ろうというところだった。

「待ちやがれ!」


俺に気がついたそいつらは間髪入れずに銃を構え発砲する…が、どれも見当違いな方向へ飛んでいく。


「…どこ狙ってやがる。
ーーー銃ってのはこうやって撃つんだよ!」


「ぐはっ…!」
「…っくそ!」
「ちくしょう!引きあげだ!」

「ショーター、前へまわれ!」
「おう!」

俺も追おうとしたが、足元へ目がいく。


「……女か?」

「いや…坊ちゃんって言ってたぜ」

「…アッシュ!すまねえ、逃げられた!裏にバンを停めてやがって」

『誰か、こっちに来ておばあさんを!』

「ああ!」

「とにかく、中へ運ぼう」


屋敷の中へ入り、“坊ちゃま”と呼ばれるヤツをベッドに寝かせた。


「…で?婆さん、どういう状況だ?」

「わたくしがお食事の支度をしておりましたら、あの男たちがきて旦那様からの使いで坊っちゃまをお連れするようにと…。そこへ運悪く坊っちゃまがいらして…あの男たちは私を殴りつけて坊っちゃまを…」

『殴るなんて、ひどい…』

「じゃあ…最初からこの少年が目当てだったってわけか?」

「“坊っちゃま”って言うけど、こいつ、一体何者なんだよ?」

「は、はい…ユーシス様は旦那様の…アレクシス・ドースン博士のご子息様でございます…」

「え…息子っ?」



その時、ユーシスと呼ばれた男がゆっくりと目を開けた。



切れ長の目が、いやに色気を放っている。



…なんなんだ、こいつは?


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