ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
その後しばらくして私たちは家を出発することになった。
「…おいオッサン何してんだよ、早く行くぞ」
「ちょ…ちょっとまってくれ…ジェシカ、これをマイケルに…」
ラッピングされたグローブを差し出すと、ジェシカはふいっと顔を背けた。
『ロボさん、それは?』
「……ああ、実はな…今日はマイケルの誕生日なんだ」
『えっ!誕生日!?…そう、だったの?』
「ああ…ユウコ…これをマイケルの枕に置いてきてくんねえかな?」
後ろめたさがあるのか…
でもそこから逃げちゃだめだよ、ロボさん。
『ねえロボさん、マイケルは“パパ”からのプレゼント、すごく喜ぶだろうね』
私がわざとそう言うと
「っ……行ってくる」
ロボさんは、マイケルの部屋に入っていった。
「はあ…ったく、情けねーな」
「まあまあ…」
みんなでロボさんを待っていると、ジェシカが私の前にやってきた。
「ねえ、ユウコ?」
『はい?』
「あなたのボーイフレンドはエイジ?」
「『えっ?!』」
「あら?違ったかしら?」
「どう見たってちげーだろ、これだからおばさんは」
「…ふうん?…なるほどね」
「ンだよ?」
「ユウコ、こういうチンピラみたいなのとだけは付き合っちゃダメよ?選ぶならエイジみたいな優しそうな子のほうがいいわ」
『っ…え?』
「………コノヤロウ」
「はあ、わりー!待たせちまった!すまねえ」
バタバタとロボさんが出てきた。
「ったくだよオッサン!早く行くぞ」
『あ、まってアッシュ!……ジェシカ、またいつか』
「ええ、またね」
「え…おい、どうしたんだよアッシュ!」
「……ふふっ、あんなナリして分かりやすい子ね。意外と可愛げがあるじゃない」
「んあ?なんかあったのか?」
「別に?…行くならとっとと行きなさいよ」
「…お、おう……またな」
「ふん」
私は車の中からジェシカに手を振った。
最初は笑顔で手を振り返してくれたけど、次第になんだか寂しそうな顔に変わった。
ジェシカの目線は私の隣。
きっと、ロボさんに注がれていた。