ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
「ンン゛っ……ごめんなさい、せっかくの食事がまずくなるわね」
「あはは…マイケル、ポテトをもっとどうだ?」
「ぼくいらない、もう寝るよ」
そう言ってマイケルは席を立つとジェシカの元へ向かった。そしてそれぞれの頬にキスをしておやすみの挨拶をした。
「おやすみママ」
「はい、おやすみ」
「おやすみパパ」
「うんうん、おやすみ」
『……』
その様子を懐かしそうに眺めるユウコ。
…こいつは今、どっちの“パパ”を思い浮かべているのだろうか。
「しばらくこっちにいられるんでしょう?」
「え…?あー……」
わかりやすく視線を泳がせたオッサンはジェシカを見てゴクッと唾を飲んだ。
「あーその…そんなに長くはいられないんだよ。仕事がすんだらかえらなきゃならないんだ…」
「ふーん……」
オッサンから目を逸らしたマイケルは「おやすみ、みんな」と挨拶をして寝室に向かおうと踵を返す。
『マイケル』
それを引き止めるようにユウコが名前を呼ぶ。
そして両手を広げ、もう一度名前を呼んだ。
おずおずと近づいてくるマイケルを抱きしめるユウコ。
『おやすみ、マイケル。良い夢を』
「…うん、おやすみ。ありがとうユウコ」
『ふふふ』
手を振って寝室に向かうマイケルはさっきまでの寂しそうな顔とは打って変わって笑顔だった。
パタパタというマイケルの足音が聞こえなくなると、再び沈黙が2人を責める。