ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
「わーい♪カリフォルニアだーい!」
「ヘーイ、カーノジョ!」
「あっ、チャイニーズシアターだ!」
行きの席順に戻った俺たちは、後ろの荷台から聞こえるエイジやショーターの声に思わず振り返った。
「ちぇっ気楽なヤツらだな!観光に来たんじゃねーんだぞ!」
「…おっさんこそどうしたんだよ、やけにイラついてンじゃんか」
「お、俺が!?…ばかいえ!そんなことあるもんか!」
ギクッと聞こえるかのような表情でおっさんはそう言った。
「これから行くところにカンケーあるんじゃないの?」
「う、うるさいな!」
『ねえ、これからどこに行くの?』
「…弁護士のおっさんに聞いたんだけど、あんたの別れた奥さんてロスにいるんだって?」
『…えっ、そうだったの!?』
「うるせーっ!!だまってろ!」
ものすごい勢いでアクセルを踏んだおっさんは何キロか乱暴な運転をして、やがてヨロヨロと車を路肩に停めた。
「アッシュ…すまない…」
「え?」
「運転……代わってくれ…気分が悪くて…」
「いいけどさ、別に。変なヤツ」
座席を交換して、俺が運転席に座る。
「道はこれでいいのかよ?」
「…ああ、このまま海岸線をまっすぐ……ぅ、ぷ」
『ロボさん大変!大丈夫!?』
「あーっ!きったねーな!車ン中で吐くんじゃねえぞ!外へツラ出せ!外へ!」
「………その、次の角を…左へ……うっぷ」
「…こっちな?」
「そこで、止めてくれ…青い屋根の家だ……っう、」
バタン
停まるやいなや、勢いよくドアを開けて茂みに向かってしゃがみ込んだ。
「んぁ?おっさんどーしたんだよ?」
「気分が悪いんだとさ」
キッ
甲高い金属の音がする方へ目を向けると、子どもがブランコから飛び降りてこちらへ駆けてきた。
「パパ!?」
「「…パパ?!」」
「えっ」
「パパ!」
「マイケル!!」
「パパーッ!!」
「マーイケル!!」
2人が抱き合う直前、突然バカでかい女の声が響いた。
「その子にさわらないで!!マックス!!」
「あ……」
声の方を見ると、見るからに気の強そうな女が何故か銃を構え立っていた。