ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《英二side》
あれから少しして、僕らは真っ暗な闇の中にいた。
息を殺して草むらにしゃがみこむ。
「リーリーリー………いくぜ」
「あいよ」
アッシュとショーターが静かにコンタクトを取ると、一斉にバタバタと何かが騒ぎ出した。
コケーッ!!!
僕は悲鳴を上げそうになるのを口を押さえて必死に堪えた。
「ファファファ!(ずらかるぞ!)」
「ファ!!(おう!!)」
両手と口に1羽ずつ、それぞれ合計6羽のニワトリを捕えた2人が全速力で走ってくる。
…って、ニワトリ!?
僕、ちょっと来いって言われて着いてきただけで…
「えっ……えっ!?」
「ファファファー!(バカ逃げろー!)」
「今なんて?!………ぎゃーっ!!!」
何発もの銃声が響く中、僕たちは車に飛び乗った。
少し走らせた先で、再び停車した。
「はぁ…はあ…先に言ってくれよ、なんだよ…そのニワトリ…」
「なんだよって…食うんだよ、それしかねえだろ…」
「そうだけど…っえ?まって、それ食べるの!?」
「なんだよ、お前はいらねえのか?」
次第にパチパチという焚き火の煙と共に肉の焼ける良い香りが漂ってきて思わずグゥーっとお腹が鳴ってしまう。
「食べる…」
「ところで…このトリどっから持ってきたんだ?」
何も知らないマックスがそう不審そうに呟いた。
「別に。その辺歩いてただけだよ」
「へーっ、気のせいかな…さっき銃声がしたよーな気がしたんだが…」
「気のせいさ。腹が減りすぎて幻聴がきこえたんじゃねーの?」
いけしゃあしゃあとそう言うアッシュ。
「こいつも焼いとけば明日も食えるぜ」
『生臭くなるから血抜きしておこうよ。アッシュ、ちょっとこの子の足持ってて?』
「ああ」
グッ
ユウコは躊躇いもなく、逆さになったニワトリの首にナイフを入れた。ボタボタと血が滴りはじめる。それを見た瞬間、ウッと胃からせり上がってくる何かを僕は必死に押し戻した。
「セーフ…」
『せっかくなら美味しいまま食べてあげたいもん、命に感謝!』
まさかユウコまでここに参加してくるとは思わなかった…。しばらくして血抜きが終わったらしいニワトリの羽を2人でバリバリとむしっているのを見て、ホントたくましいな〜…と僕は少し目を逸らして小さく笑った。