ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
下着姿で胸から血を流し、ピクリとも動かないジェニファ。
『ジェニ、ファごめんなさい…、ジェニファ…っ!』
直接ごめんも言えないままにこんなことになってしまうなんて。
「…ジェニファ……」
アッシュのパパがアッシュに支えられて体を起こした。
「いい女だったのにな…いい女はみんな早死にしやがる…」
「傷は?」
「弾丸は貫通してるが出血がひどいな…」
「ジーム!!」
「どうしたんだ!銃声がしたぞ!!」
「なにかあったのか!?」
警戒する私たちにアッシュのパパは「心配ない、友達だ」と答えた。
「ハワード…!大丈夫だ、入ってきてくれ…!」
「どうし……な、なんだこれは…!?何があったんだ!?」
「強盗にやられた…」
『「!?」』
「ふたりとも殺ったが、こっちもジェニファが…」
「ジェニファ!!」
「警察を呼んでくれ…それから救急車を…」
「わかった!待ってろ!」
「アッシュ…」
「?」
「その銃を…おまえが、ヤツを撃った銃を、よこせ…」
アッシュのパパは銃を服で拭う。
「おい、動くなよ…血が、」
「こうすれば…おまえの指紋は残らん…」
「!」
「あんたも…ナイフの指紋をふいて…ジェニファに握らせろ…じきにポリ公が来る…その前にここから逃げろ…あとは俺がうまくつじつまをあわせておく…」
「動くなったら!出血がひどくなる!」
「おめェ…やるじゃねえか、マフィアのボスにタテついたんだと?」
「……」
「ひとつだけきく…グリフィンを殺したのは連中の仲間か?」
「………ああ」
「そうか……わかった、じゃあもう行け…」
「だから動くなったら!」
「ばかやろう!サツがきたら何もかもおじゃんだろうが!!」
「!」
「おまえが…何を考えてるか知らん…が、おまえの…やりたいようにしろ…そこの、棚の酒瓶の後ろにカネが入った箱がある…持っていけ…行け早く…おまえがここにいたって何もならん…」
「父さん!」
ウィーン
ウィーン
パトカーのサイレンが聞こえてくる。
「ポリ公だ…」
「早く行け!!何をぐずぐずしている!」
「行こう、アッシュ…」
「アッシュ!ユウコ!早く!!」
「行こう!おやじさんの気持ちをムダにするな!」
「…こんちくしょう、カッコつけやがって!」
私は走り出せずに立ち尽くした。