ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
《アッシュside》
「よーし、いい子だ。孝行息子を持って幸せだなおやじさん」
親父は信じられないものでも見るような目で俺を見ていた。
「行きな、ねえちゃん」
腕を開放されたジェニファは縋るように俺の元に駆け寄ってくる。
「ア…アッシュ…!」
「ごめんよ、ジェニファ…心配いらないさ、なんとかなるって」
「バカなヤツだな、おまえは。パパ・ディノに逆らって勝てると思うのか?」
「けっ」
「おまえは生かして連れてこいというパパの命令だ…しかし気の毒だが両腕は折らしてもらうぜ。パパが殺し屋に育てようとしたほどのおまえだからな。…それはそうとユウコ・リンクスはどこだ?近くにいるのか?…………ウッ!」
突然背後から強い光が差した。
…車のハイビームか?
「動くな!警察だ!!」
やるじゃねえか、オッサン。
俺は相手が怯んだ隙に目の前の男を蹴りあげた。
「小僧!!」
もう1人の男が銃を構えてこっちを狙う。
スッと、俺の前に銃を構えて現れたユウコの頭を掴んで伏せさせると、3発の銃声が響く。1つはユウコの、もう2つはこの男のだ。
「きゃあああっ!!」
背後から聞こえるジェニファの悲鳴に振り返ると血しぶきが飛んでいた。
「ジェニファ!」
「!」
『ジェニファ!!!』
ユウコの撃った弾が腹に当たっている目の前の男は、ヨロヨロと起き上がり親父に銃を向けた。
「逃げろ!アッシュ!!!」
『!』
ズキュゥン
ユウコが撃った弾が男の手首に当たる。
ドンッ
急所からズレた位置で、男の銃弾が親父の肩を貫いた。
「父さん!!」
俺は近くに転がる銃を拾い上げ、男の心臓を撃ち抜いた。
「ぐっ…!!」
「父さん!」
『…っう!』
……ユウコ!
「!」
ユウコの首を締め上げようとする別の男、まずいと思った次の瞬間…ショーターが背後からその男の首をナイフで掻っ切った。
『ゲホッ…ゲホ…、あり、がと…』
「……」
「見るなよエイジ、おまえ向きじゃない」
「英ちゃん!大丈夫か!?ケガはないか?!」
「え……ええ…」
「彼女は?」
「…だめだ…」
「ちくしょう…」