ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
《アッシュside》
あれからしばらくして俺たちは店の前まで戻ってきた。
…なんだ?さっきまでと何か違う気配が…
『ねえ、アッシュ。…なんか変な感じする』
ユウコもこの違和感に気付いたようだ。極力足音を立てないように、俺たちは窓を覗いた。
『「!?」』
中でスーツを着た男2人が銃を片手に親父とジェニファを人質に取っている。傷だらけな姿に抵抗した様子が見て取れた。
『……っ!』
「待て」
乗り込もうとするユウコの腕を掴む。
『…だって、ジェニファ…服破られて…たすけなきゃ…』
「…待て、わかってる」
どうする?…考えろ、ヤツらの目的はどう考えても俺だ。俺がヤツらの隙をついて窓から撃てば動揺ついでに2人をこいつらから離せるかもしれない…それで、その後はどうするのが最善だ…?
その時
「アーーッシュ!!」
『「!」』
ドゥン
ガシャーン
銃弾で窓ガラスが割れあたりに吹き飛ぶ。
…クソ!気付かれた!
「アッシュ・リンクス!」
「……」
「小僧、聞こえるか?おやじと女の命が惜しかったら銃を捨てて出てくるんだ……おい聞こえねえのか!!」
『…アッシュ』
「………」
「それなら女からブチ殺してやる!」
「きゃああああっ」
「やめろ!!…言うとおりにするから2人に手を出すな!!」
「ようし、いい子だ。銃を窓から投げてよこせ!」
「…ユウコ、お前はここにいろ」
『でも…!』
「いいか?ここを離れるなよ…絶対にだ」
「早くしろ!女が潰れたスイカみたいになってもいいのか!」
「ほらよ」
俺は銃を中に放り込む。
「素直ないい坊やだぜ。それじゃあ両手を頭の後ろに組んで中に入ってきな」
「2人を放せよ!!」
「…おいおい、カン違いすんなよ。ぼうや、命令すんのはこっちだ。お前が戸口に立ったら女を放す…おやじはあとだ」
チラリとユウコに目をやると、力強い眼差しで俺を見ていた。…俺の言うことを聞く気はないってことか。
「どうした小僧!聞こえてるのか!!」
「わかったよ言うとおりにすりゃいいんだろ!ドちくしょうめ!!…くそったれ地獄におちやがれ!」
俺はドアを勢いのままに開き、腕を頭の後ろに組んで睨みつけた。