ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
『!……っん…』
首筋に唇が触れてリップ音がする
…アッシュ、今なんて?
すると、掠れた声でアッシュは私を呼んだ。
ふぅっと息のかかる耳元が熱くて軽く振り返ると目が合う。透き通ったグリーンアイズに性的な熱は一切ない。
その瞳は心の奥を読むように鋭く、それでいて温かく私を見つめていた。
…この目、覚えがある。
そうだ、いつだったか私がクリスとのことで嘘をついて、それを見抜いた時のアッシュの目だ。
「ユウコ」
『……っ!』
「…ユウコ、悪かった」
何故アッシュが謝るのか、よくわからない。でもその声があまりにも優しくて涙がじわじわとせりあがり頬を伝う。
するとゆっくり顔が近づいてきて、その涙に口付けられる。
『っ!…ア…ッシュ…?』
私が名前を呼ぶと綺麗な眉毛が苦しそうに歪んだ。そして次の瞬間、正面からきつく抱き締められた。
「死ぬ気だったのか?」
『……』
「ひとりで…死のうと思ったのか?」
『……っ、』
…アッシュ?
「…絶対に、ひとりでなんて死なせない。そんなこと俺が絶対に許さない。俺は……っ、おまえを守りたい」
スッ…と私の手から銃が滑り落ちる。
一気に力が抜けて、ズルズルとしゃがみこむ私たち。
間に合ってよかった、アッシュはかろうじて聞き取れる大きさで何度もそう繰り返した。