ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
跡形もなく建物が消えたこの一帯は、かつてここに家があったであろうことを示すかのようにその部分の草だけが朽ちていた。
『……っ、』
両親の自殺は本当だった
ザリッ…
焼けた細かい木片を踏みながら、足を進める。
『……た…、っ…いま』
ただいま、
『………っめ、……さい…っ』
ごめんなさい、
『…ママ…、パパ…!』
私はいらない子じゃなかったの?
捨てられると思ったのは私の勘違い…?
その答えはもう二度と聞くことができない。
…ここにはもうなにもない。
確かにここにあったはずの温もりや思い出が…もうなにひとつ残っていない。
私のせいだ。
2人は、私のせいで不幸になって
私のせいで…死んだ。
私が生まれてきたせいで。
出会ってしまったせいで。
ここに来たせいで。
私なんか生まれて来なければよかったのに。
お父さんやお母さんじゃなく、
パパやママでもなくて…
本当は私が死ねばよかったのに…ッ!
『……ぅ、う゛…っ!』
ガチャッ
私は背中に挟んでいた銃を取り出し、勢いのままに自分のこめかみに突きつけた。
そうだ、初めからこうするべきだった。
生きようと必死だった自分がひどく恥ずかしい。
ーー早く引き金を。
『……っ…』
ガタガタと震える腕が言うことをきかない。
何してるの、
引け、引け…早く!
もう私が生きる理由はなにもない
アッシュ…
ーーアスランとはもう生きられないのだから。
死ね、死ね…
早く死んでしまえ!!!
「ユウコ!!!」
『っ!………な、んで』
振り返らなくてもわかる、これはアッシュの声だ。
どうしてそんなに息を切らしてここに…。
ザッ、ザッ…とアッシュの足音が近付いてくる。
死ぬところを見られたくない。
血や脳が吹き飛ぶ醜い姿を晒したくない。
『だめ……こ、ないで』
来たら死ねなくなる
「ユウコ…」
『…おねがい……やだ…』
そんなに優しく名前を呼ばないで…!
その声を聞くと心が千切れそうになる。私が全部壊したのに、もう全てが手遅れなはずなのに…!
『っ!』
「………」
足音がついに私の真後ろで止まった。