第19章 Cape Cod

《アッシュside》


｢えっ？…ショーター？｣

｢おいアッシュ、そんなとこしゃがみこんで情けねえな。あの日李家の屋敷で、ああまで言ったお前はどこに行っちまったんだ？…ッハハ！そうか、あいつが言った通りお前はホンモノの“嘘つき”だったわけか｣

｢…あァ？｣

｢前にも言った通り俺はあいつのことまんざらでもねぇ…。俺はあいつを今すぐお前の前からかっさらって、一生お前の目が届かない場所へ連れて行ったっていいんだぜ？｣

｢……好きに、したらいいだろ｣

｢ああ…そーかよ、そーするよ｣


俺の横を通り過ぎゆっくりとドアに向かうショーター。


｢…意外と女々しいヤツだったんだな、お前って｣

｢……｣

｢お前の気持ちはその程度だったのかよ？｣

｢……｣

｢あいつ、今頃泣いてるんだぜ…？ひとりぼっちで｣

｢……ッ、｣



｢…はァ、さーてと。そろそろまじで心配だな…エイジ、ちょっと俺行ってくるわ｣

｢え、ちょっとショーター…｣



ギィ…バタン



｢……アッシュ、｣


不安そうな声で俺を呼ぶエイジに、イラついて叫んだ。


｢わっかんねェんだよ！なぁエイジ、俺の何がいけなかったんだ…？俺はあの時どう応えるべきだった？！…買うと言えば良かったのか？あいつが望んだとおり客として…今晩あいつを抱けば良かったのか？！｣

｢アッシュ！｣

窘めるような声にハッとする。
こいつに今更こんなことを言ったって仕方ない。



｢っ……悪い。俺は今あいつと同じくらい冷静じゃない…だから今は少し頭を冷やし｣

｢なんだ、よかった。わかってるんじゃないか｣

｢…え？｣

｢だから…さっきのユウコが全く冷静じゃなかったって、キミはわかってるんじゃないか｣



俺にはエイジの言いたいことの意味が理解出来なかった。