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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


どうして、

どうして…!?

捨てられると思ったからその前に捨ててしまえとこの街を出たのに!

考えるほどに胸が苦しくて、喉に何かが詰まっているみたいに吐き気がした。

『…ッ』

視界が回るような感覚に目を閉じると、心や脳の悲鳴が聞こえてくる。


もうなにも考えたくない、

苦しい、くるしい…。



さっきからずっと…感情が分からない。
コントロールが出来ない。

すごく悲しいのにすごくイライラして、すごく寂しいのに今すぐひとりになりたい。

泣きたくない、
泣きたくなんかないのに…!!


『…っ…ゔぅ…ッく』

「ユウコ…、」

肩を支えられた。普段なら嬉しいはずのそれが…何故か今はとても煩わしい。


『っ、はなしてよ…』

「…落ち着け、ユウコ」

『う、るさい!…はなしてってばっ!!』

「!?」


ーー「いいかい?ユウコ。もし正面から敵に両肩を掴まれた時は……こう、するんだ」

ーー『すごい…私にも出来るかな?』

ーー「出来るかどうかを判断するのではなく、どうすれば出来るかを考えなさい。いつか必ずお前の役に立つことだよ、わかったね?」

ーー『Yes.リュビームイ』




「…ッ…お前、」

『ねえどうして…?』

「?」

『ッ…パパとママが自殺したって、知ってたんでしょ?…なのにどうして何も教えてくれなかったの?』

「………」

『知ってたなら、昨日の夜に話してくれたら良かったじゃない…それなのにまた改めようなんて言い方してさ…っ』

「それは、」


『………っ…そ、つき』

「ユウコ…?」

『私たちは、ずっとふたりなんかじゃなかった…アッシュには家族がいて…っ本当は私だけがずっとひとりぼっちだった…!』

「…何言って、」

『ずっと一緒にいたのに!アッシュがふたりだって言ってくれてすごくすごく嬉しかったのに…っ、ひどいよ…アッシュのうそつき!』

「……っ!」



…壊した、私が全て。
これでもう、アッシュとは一緒にいられない。



でもやっぱりひとりは耐えられない。
ひとりは嫌だ…ひとりはこわい…


探さなくちゃ、誰か…誰でもいい。
温もりと同時に、罰を与えてくれる誰かを。

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