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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


『…ッ…や、おねがい離して!…さっきのこと、ちゃんと謝るから…ゆるして…ジェニ…ッ大切な家族のことを悪く言ってごめんなさい……大切な家族がいたのに…あの日、一緒にこの街を出ようなんて言って…ごめん、なさい…!』

「……は?」

自分で口にしておきながら、私は自分の言葉に酷く傷付いた。


こんな思いをするくらいなら、

『っ……私なんか、生まれて来なければよかった…』

「お前なに言ってんだよ?!話が飛躍しすぎだろうが!」

『もう、いいから…はなして』

「よくねえよ!」

『もういいよ…だって……私のせいで…みんな…』

「……なに?聞こえねえ」


『パパとママが自殺したの、私のせいなんでしょ…?』

「……っ!」

『あの夜ママが言ってた、私を養子にとったからこんなことになったんだって…きっと、優しかったパパも本当はずっとそう思ってたんだ…っだってそうじゃなかったら私を捨てようとなんかしないよね…本当のお父さんとお母さんも私のせいで死んじゃって……ひとりになったのはぜんぶ私がわるい…っ…みんなを不幸にして、私なんか…本当に生まれてこなければよかった…!』

「ばっ!バカヤロウ、落ち着けって!」


「もうやめて、ユウコ…ッ!」

突然ジェニファがひどい涙声で叫んだ。

「違うの、違うのよ…ユウコ!テイラーさんはね、あなたを捨てようなんてこれっぽっちも思っていなかったわっ!…本当よ。彼はあなたたちがこの町を出て行ってしまった日、ずっと遅くまであなたを探し続けていたの。その次の日も、その次の次の日も朝から晩までずっと!…テイラーさんは、あなたのパパは…あなたを心から愛していたのよ!」

『ぅ…嘘だ!…だってパパ、わたしを…っ親戚、にあずけるって…っふたりであたらしく暮らすって…わたしのことなんか捨てて、わすれて…ふたりで…、だからここでもわたし、ひとりになって…っ』

「嘘じゃないわ!テイラーさんがこんなにも愛していたあなたを捨てようとするわけないもの!…どうかお願いよ、信じて」

ジェニファはパパの封筒に触れ、何度も信じてと叫びながら泣いていた。


でもそんなの、信じられない
だってもし私を愛しているのだとしたら…


『じゃあ…どうして死んじゃったの…っ?』


パパとママは、
どうして…私を置いて自殺なんてしたの?

私を1人にしたの?
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