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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


『…あんたは、グリフがいなくなってからアスランがあの広い家で1人寂しく過ごしてるって気付いていたくせに、なにもしようとしなかったじゃない』

「……」

『昔アスランが言ってたよ、ごはんの時間が嫌いだったって…1人で食べるごはんは味がしなかったって。それなのに寂しかったらおいでなんて、そう言われても行けないってあんたはとっくにわかってたくせに…!』

「……っ、」

『ねえ…?なに傷ついた、みたいな顔してるの?全部事実じゃない。私は…アスランからも、アスランのパパからも嫌われないように…しかも自分が傷つかないように予防線をはってる卑怯なあんたのことが、幼心にずっと嫌いだった』

「…おいユウコ、」

『それなのに、都合のいい時だけ母親のフリ…?あんたなんか母親でもなんでもない!アスランなんて呼ばないでよ!!!』

「ユウコ!いい加減にしろっ!!」


ビクッと肩が震える。


私はこの数分、一切周りが見えなくなっていた。ハッとして辺りを見回すと、カウンター付近のみんなは目を丸くして私を見ている。


「…お前がジェニファを責めるのは間違ってるだろ。いくらお前でも、今のは聞き流せない」

『………ぇ、』


アッシュにあんな風に怒鳴られたのは初めてだった。

怒らせてしまったなら謝らなくちゃ、でも…何故アッシュが私に怒るのか理解が出来なかった。だって、アッシュをひとりぼっちにしたのはこの女でしょ…?


だからひとりぼっち同士の私たちは、一緒に家族やこの街を捨てて“ふたり”になったんだ。



「…っ、アスラン…ごめんなさい、私…」

「あぁ、謝らないで…ごめんよジェニファ…俺、あんたのことそんな風に思ったことなんて1度もない。あんたは本当に良くしてくれた。今も昔も、本当に感謝してるんだ」

『…え?』

カウンターに駆け寄るアッシュは、涙を流し俯くジェニファの顔を覗き込んでいた。

そして、一瞬チラッと私に視線を向けた。
それはとてもとても冷たい視線に感じられた。




それを見た瞬間胸がズキン、と大きく痛む。








私は、最も蘞い真実に気が付いた。








ここで本当にひとりぼっちだったのは、





私だけだったのだと。

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