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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


「ユウコ、待って!話を聞いて!」

『は…話なら、直接』

自分で言って、ハッとした。

そうだ、


『っそうだよ…直接聞けばいいんだ…!』

「!」

『あの家に行って…その封筒の中身のことも、なにがあったのかも…』

そうすれば、あんたなんかから聞く必要もない。


私が背を向けると、後ろからアッシュのパパの声が聞こえた。


「おい、やめておけ」

『……っ』



聞こえないふりをしてドアノブに手をかける。


すると、


「…ユウコ、」


アッシュが静かに私を呼んだ。
その声を無視することが出来なくて、思わず静止する。


『………』


「おじさんは、もういない」



『……………え?』


「…おばさんも、」



いない?
…それはどういう意味?

もうあの家にはいないってこと?
そもそもどうしてアッシュがそんなことを…


『じゃあ、パパたちはどこ?』


「…それは、」





ガチャ


『っ!』

「…おおっと、悪ィな嬢ちゃん!」
「おーいジム、いつものやつをくれよ」
「って…なんだァ、今日はやけに客がいっぱいじゃねえか!珍しいこともあるもんだ!」

突然ドアが開いて、野球着に身を包んだ5人程の男が店に入ってきた。中にはフラフラした男もいて既にお酒が入ってる人もいるらしい。


私は避けるように隅に寄った。

「…あれっ、おまえ」

その声に目を向けると男の視線の先にアッシュがいた。

「おいジム!こりゃあおまえのせがれじゃあないのか?」
「せがれって言やぁ、確かあの……」

「悪いな、今日は休みだ…出てってくれ」

「休みだァ?だって看板が出てンじゃねえか」

「だから今日はしまいだと言って…!」

「おい!見てみろよ!」
『…っ!』

いつの間にか近付いてきていた酒臭い男の顔がズイッと寄る。


「この黒髪と顔立ち、どっかで見たと思ったら」

『…なに、』

「おめェ、アレだろ?昔この町にいた、

…淫売少女」


『!?』

その場の空気が一気に凍りつくのを感じた。

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