ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第7章 何度も抉られる
《アッシュside》
フラフラになりながらスキップも倒れる俺の元に近付いてくる。大丈夫だ、と伝えると良かった。と微笑んだ。
マービンとオーサーは少し離れた場所でなにやら揉めているようだ。
どれほどか時間が経ち、痛みは少し落ち着いてきた。とにかくスキップとユウコをこの場から解放させなくては…。マービンがこいつらを囮に使ってでもこの場に俺を呼び出したかった理由はきっと“あれ”だ。あいつらを傷付けてまで、今だ得体の知れないあんなものが欲しいならくれてやる。
「すまんな…なんのことだかわからんね」
クソ…!このブタヤロウ、腐ったヤツだとは思っていたがここまでとはな…!!怒りに狂いそうになる中、外で俺たちを呼ぶショーターの声が聞こえた。
ショーターにディノの手下のことを伝えると、コンテナの裏に隠れた。パトカーの音がする。警察やショーターたちが来てくれたとなればもう大丈夫だ。
エイジも無事だったらしい。すっかり助けられちまった。
すると、マービンは突然俺に銃口を向けた。
しまった。腕は拘束されていて、立ち上がるのにも時間がかかる。ここまでか…、そう諦めかけた時ユウコが俺の前に盾になるつもりで全力で走ってくる。ダメだ、くるな!そう叫ぼうとした瞬間
「アーーッシュ!!!!」
スキップの叫び声がした。
目をやると、マービンは反射的にそちらに銃口を向けて引き金を引いていた。
銃声が響いて、目の前でスキップが撃たれた。
おい、嘘だろ。なんでだ…
「スキッパーッ!!!!!」
スキップはぐらりと体を揺らし、倒れ始める。
「…スキッパーッ!!」
地面に倒れるスキップを抱き起こしたいのに、腕が拘束されていてそれが叶わない。頬に両手で触れると、もう息絶えているとわかった。その頬を目に溜まった涙がツーっと流れた。その涙を見た途端、プツンと俺の中で何かが切れる音がした。
車に乗り込み逃げるマービンを追うように、俺もその場にある車を奪って乗り込みアクセルを踏み込む。
俺のせいでスキップは…!!!
ちくしょう!!
怒りで頭がおかしくなりそうになる。
車の中には俺の荒い呼吸だけが響いていた。