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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


《英二side》

「…あいつらは、いつも近所の公園で遊んでいたよ。ユウコを引き取ったテイラー家の親父さんが故郷の孤児院であいつがよく遊んでいたブランコを作りたいというんで、手伝ったこともあった。…7つで最初の事件が起きてから、その後もあいつはちょくちょく例のヤローに引きずり込まれたらしいが…最後にとんでもないことが起こった」

「…とんでもないこと?」

「ある時アッシュとユウコが、2人でヤローを撃ち殺しやがったんだ…いつの間にか俺の銃を持ち出してな…8歳の時だ」

「!?」

僕たち4人は一斉に息をのんだ。
僕は一連の話は聞いたことがあったけど、まさかこの時に犯人を撃ち殺していたとは知らなかった。

「…それで、ポリ公がヤツの家を調べたら地下室からゴロゴロ子どもの骨が出てきたんだ…とんだスキャンダルさ。新聞にも出たから覚えてるヤツも結構いるだろうよ。「コッド岬の青髭」ってな…」

「あの事件か…」

「アッシュのヤツはカネをもらってたから、ヤローも安心して殺さなかったんだろう…まぁ、事情が事情だから2人とも罪にはならなかったがこんな小さな町だからな…色々、人の噂もある。現場にはカネが散らばって、2人とも服を破られてたってんで…ガキのアッシュやユウコにも直接暴言を浴びせるヤツもいたよ。…女のユウコは余計にやれ売春婦だ、淫売女だと言われてついには母親が病んじまった」

「…ひどい」

悔しくて、悲しくて、喉がツンと痛む。

「…アッシュのヤツも、この町にいればいつまでも言われ続ける。だから俺はあいつをフィラデルフィアの妹のとこへやろうとしていたんだが…」

「……家出、しちゃったんだね」

「ま、そういうことだ…ある朝、突然2人していなくなっちまったもんだから大変な騒ぎになったよ。大方うちのバカ息子がどっかに連れ出しちまったんだろうから、何遍も謝りに行って」

「ユウコの家もこの近くなんだよな?予期せぬ事態には違いねぇが、こうして帰郷したわけだし顔見せてやったら親父さんも喜ぶんじゃねえか?」

「うん、僕もそう思う。ユウコは気まずいかもしれないけど、せっかくの機会だし」


「……いや、それは無理だ」


「えっ…?」

「無理ってどういう意味だ?」


「…もう、いないんだよ」


その後の言葉に僕たちは絶句した。
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