ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
《英二side》
…ゥウウウウン
「……ん、」
ズキュゥウウン
「…う、ん?……なんの音?」
目を擦りながら体を起こし辺りを見回す。
「あれ…アッシュ?」
早いな、もう起きてるのか。
階段を降りると、ユウコはまだソファで眠っていた。
あまり女の子の寝顔をジロジロ見るのも悪いと思って、音を立てずに通り過ぎようとしたら
「っ!…ふふ…かわいいなぁ」
ユウコは何故かアッシュの上着を大事に抱えながら眠っていた。
きっとこの外の音の主はアッシュ、…ってことはこの姿をアッシュも見たはずだ。自分の服を抱き締めて眠るユウコを見てアッシュはどう思ったんだろうか。
照れるアッシュを想像しながら僕はゆっくりドアを開けた。
「……ふう」
朝の風が心地よくて伸びをしながら深呼吸する。
遠くにアッシュの姿を見つけた。
「…あ、やっぱり」
ズキュゥウウン
バリンッ
アッシュの撃った弾が遠くの的に当たった。
「うわあー、すごいなー」
「起こしちまったか、悪かったな」
「いいや、ちょうど目がさめたんだ」
「…かなりなまったな、さっき1つ外した」
「えっ、あれで?!」
あんな遠いところの的を1つ外したくらいでなまったなんて、驚いて思わず変な声が出てしまった。
「そういえば、肩の傷は大丈夫かい?そんなことしていいの?」
「こんなのカスリ傷さ」
タフだな〜…
日本が戦争に負けるわけだ…。
「撃ってみるか?」
「え?」
「撃たしてやるよ、撃ちたけりゃ」
「いいの!?」
実を言うと少し興味があった。
対ヒトに撃てる自信はこれっぽっちもないけれど、的になら撃ってみたい。こういうのをカッコイイな〜と思うのは不思議なことじゃないはず。男の憧れ?なのかな。
初めて会った日のように、アッシュは銃を僕に手渡した。
持ち手を握りしめ銃口を的へ向けてみる。
「…なんだよ、そのへっぴり腰は。もっとしっかりグリップを支えて!こいつにはマグナムが装填してあるんだ、それじゃ手首を痛めるぞ……この距離なら風の抵抗は考えなくていいから、よく狙って引き金を引くんだ」
「…うん」
「軽くていいんだぜ、引き金を引く時は。さぁ、よーく狙って…」
引き金をゆっくり引く。