ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
《アッシュside》
『……悪い方に考えてる顔だった』
「……ワリィ」
『いつか全部が落ち着いたら、ちゃんと送ってあげよう』
「…ああ、必ず」
「なあアッシュ、グリフィンがサイゴンからよこした手紙はこれだけか?」
「俺が知ってる限りではね」
「そうか…ショーター、エイジ、ユウコもここへ来てこれを見てくれ」
「ん?なに?」
「グリフィンを殺した男を見たのは、ここにいる中ではお前たちだけだ。この中にそいつがいるか?よく見てくれ、いいか?大事なことだからな」
『「「………」」』
3人の表情が真剣なものに変わった。
「……これは?」
「似てるけどちょっと違うな…」
『…………あっ』
「!?」
「あ、これ!この右から3番め!」
「………そうだ!こいつだ!!」
「それは確かか!?」
「ああ、間違いねえよ。多少老けちゃいるけどこいつだ!」
「…こりゃあグリフィンが以前いた隊だな。認識票が違う……アッシュ、名簿あるか?」
「これしかないよ」
俺は古い名簿をおっさんに手渡す。
「これでわからなきゃお手上げだな…お前ら、再三言うがよく見てくれよ…なにしろ10年まえの写真だからな」
「……あ!あったあった!これ!!」
「ああ、こいつ意外と特徴あんな…1度見たら忘れないツラだよ」
「えーと…?エイブラハム…エイブラハム・ドースン…住所はカリフォルニア州ロス・アンジェルス・ウエストウッド42…102……あの死んだスティーブン・トムソンは最後にその住所を言ったんだな?ーーアッシュ」
「……ああ」
「そうか…」
「ねぇ、やっぱりこいつが“バナナフィッシュ”なの?」
「とても麻薬組織の大モノなんかには見えなかったけどな」
「とにかく、本人を探してみなきゃどうにもなるまい…それに、少なくとも西海岸ならディノ・ゴルツィネの手も届かない。西には西のファミリーがあるからな」
「ロス・アンジェルスか…遠いなァ…」
気の抜けた声を出すショーターの向こうで、エイジがイベを力なく見つめていた。