ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
「…あ、あぁ…おれ、たちは…」
「…友だちさ」
アッシュはそう短く答えた。
「友だち…ね。おまえがたらしこんだのか?」
「…なにィ?どういう意味だ、そりゃ」
「よせよ、おっさん…いいから鍵を出してくれよ」
「…用がすんだらさっさと出ていけよ」
ジャラッとポケットから鍵を取り出したアッシュのパパはそれを乱暴にテーブルに放る。
「おいあんた!」
「お…おい、マックス」
「さっきから聞いてりゃあなんだ!それが自分の息子に言うセリフか!?」
「…なんだこいつは、おまえの情夫か?おいあんた…オレの息子と寝るのは構わんが、ちゃんとカネを払えよ」
「!…なんだともういっぺん言ってみろ!」
「やめろマックス!!」
「なんでそこまで息子を侮辱するんだ!」
「ほっとけよおっさん。こいつはそういうヤツなのさ…さあ行こうぜ……そうだ、一つだけ言っとくよーーグリフィンは死んだ。もっとも、あんたにはどうだっていいことかもしれないけどさ……おい、ユウコ行くぞ」
「ま、待ってアッシュ!」
アッシュはあの女の声を無視して私の背をドアの外にトンッと押した。
バタン、と閉まるドアの向こうで2人の声が響く。
「ジェームズ!なぜあんなこと言うの!?」
「……」
「ジェームズったら!!」
「うるさい!おまえの知ったことじゃない!」
「…ユウコ」
店を見つめたままの私にアッシュが声を掛けた。
『……うん』
私たちはアッシュの生家に歩き始めた。そして、しばらくすると見覚えのある家が現れる。
「あそこが俺とグリフィンの生まれた家さ」
「……」
「俺とグリフィンが母親の違う兄弟だってことは知ってるだろ?俺のおふくろはグリフィンの母親を追い出しちまったくせに、俺を産むと今度は別の男と逃げちまったあばずれさ…そのうち、おやじが女とあそこに住むようになってここは俺とグリフィンの2人だけになったのさ」
淡々と話し続けるアッシュ。
ロボさんは眉間にシワを寄せて視線を落としている。
「アーッシュ!」
そこにジェニファがこちらを追うように大荷物で駆けてきた。