ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
ユウコ…、起きて?
その声に私は思わず抱きついた。
「…わ、…っ」
あれ、私と同じくらいの体格だったはずなのに…思うように腕が回らない。それになんだかガッチリしてる…?
『…ん、』
アスラン、そう呼ぼうとした瞬間目が覚めた。頭も一気に覚醒して、今の自分の状態に青ざめる。
私、何してんの!?
『……ご!ごめん…寝ぼけてた!』
私がバッと音がしそうなほど勢いよく離れるとアッシュは、ポンと私の頭に手を置いて荷台の方へ歩いていった。
赤くなった頬を隠すように顔を覆う。
私いつの間に寝ちゃったんだろう…
そのまま目を擦り伸びをすると、懐かしい風のにおいがした。
『…………』
ついに、来てしまった。
この海の香り…ケープ・コッドだ。
車を降りるとアッシュは荷台のエイジたちに声を掛けていた。
「おい、起きろ!…起きろって!いつまでもグダグダ寝てんじゃねえよ」
「ん……ケツがいてえ〜」
「着いたんだよ、さっさと降りな」
ゾロゾロと腰をおさえながら降りてくる3人。
『おはよう、腰大丈夫?ごめんね…私シート座らせてもらって…』
「あ、ユウコおはよう!全然、気にしないで」
「結構揺れたしな〜、お前軽いから後ろだったらあちこちすっ飛ばされてたかもしれないぜ!」
「ハハ、確かに!…それにしても、いいところだなあ」
「ここがニューヨークから500キロなんて、ちょっと信じられねーな」
『…ん?』
ロボさんとイベさんがアッシュに何かを話しているのが目に入る。私はアッシュたちに近付いた。
「とりあえずは、グリフィンの遺品だな」
「……」
「お前の実家はどこなんだ?」
「……」
「…おい、アッシュ?」
「お前なあ…出てきた手前家に帰りたくねえのは分かるが、いつまでも拗ね…」
「わかったようるせえな!!アンタに何がわかるよくそじじい!!」
アッシュは突然大きな声をあげて、歩き出してしまった。その声に驚いたようにエイジとショーターが駆け寄ってきた。
「…どうしたんですか?」
「いや…なんでもないよ」
私は早歩きで進むアッシュを追いかけた。
歩幅が違うから、私が小走りでようやく並べる。
それに気がついたアッシュは小さくため息をついて「悪い…」と歩くスピードを緩めた。