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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


静まり返る車内。

車が走り出して少ししたタイミングで、ロボさんが突然素っ頓狂な声をあげた。

「ひょーっ見ろよアッシュ!すんげえ美人!」

ロボさんが指さしたのは横断歩道を渡るカップルの女性だった。ブロンドの長い髪と豊かな胸を揺らしながら隣の男の腕にギュッと腕を絡めている。


「……っせーな、興味ねえ」

「なんだお前興味ねえって!若いのに不能かよ?!…にしても隣の男、冴えねえヤツだな…。俺の方が断然イケてるぜ」


『……あっ!!』



「わ、なんだよ、急にでっけえ声で!」

『ヒューゴ…!アッシュ、あの人多分ヒューゴ!!』


アッシュは私の言葉にチラリと目線をやって「良かったな」と言った。


『どうして!』

「…俺は会わないって言っただろ、行くならお前1人で行けよ」


ヒューゴ達は信号を渡り切ってすぐの店の階段を地下へと降りていった。


「おい、どうする?信号変わっちまったぞ」

『ロボさん、そこに停まって』

「オーケー」


まもなく車は路肩に停車した。



『アッシュ!』

「…俺は行かない」

『いいから、行こう!』

「しつこいな…俺は、」

『…っ…私のせいだよ』

「は?」

『ヒューゴが自分のせいって悩んじゃったのも、アッシュが俺のせいって自分を責めるのも……全部元はと言えば私のせいだよ…!』

「…ユウコ、」

『私があの時車に乗らなければ…私に……アッシュを守れる力があれば…絶対にこんな今じゃなかった…!だから全部…私のせい!アッシュのせいじゃない。…だけど、私はヒューゴに直接会ってあの時のお礼を言いたい…ちゃんと大人になったところを見てもらいたい。…私だって…いっぱい汚されちゃったし、ろくな人間じゃないけど…約束果たしたい』


話していて感情が昂ってしまったのか、涙が零れた。



「バカ…お前は汚れてねぇよ」


アッシュの指が私の頬に触れて涙を拭った。それが昔を思い起こさせてまた涙が溢れる。


『…ぅ…っ』

「あーもうわかった、俺も行くから泣くな!」

『…っ…ん』


「やっと仲直りかよ?クーッ!見せつけやがって!ホラさっさと行ってこい!」


再び車を降りて私たちは先程の横断歩道を急いだ。


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