• テキストサイズ

ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


可愛がっていたストリートキッズ、それはきっとアッシュのことだ。

アッシュが私に隠れて仕事をしていた時に、よくヒューゴと一緒の作業をしていたと聞いたことがあった。それを知る人の話がここまで辿り着いたんだろう。


「ハッキリとした情報がなくて悪いね」

「…いや、ありがとう」


アッシュはそう言いながらお金を置き、お酒の入った袋を抱えて扉に向かって歩き出した。

「お、おい兄ちゃん!多すぎるよ!」


「取っといてくれ」


「へ?いや…お嬢ちゃん」

『ありがとうございました』


困った目を向ける店主にお礼を告げて私もアッシュを追って店を出た。




『……アッシュ、』

「車に戻るぞ」

『え?』

「あいつはきっともう俺が死んだと思ってる、それならそれでいいだろ」

『どうして?…だったら余計に会って話さなくちゃ』

「どうせ会って俺が生きてると分かったところで俺はろくな人間じゃない」

『っ!そんなこと言わないで』

「本当のことだろ?俺はついこの間までムショに入ってたんだぜ?今だって警察に追われてる身なんだ」

『刑務所に入ることになったのは誰かに嵌められたからであってアッシュが悪いわけじゃ…!』

「もういいんだ!…ヒューゴには感謝してる、してもし尽くせない程に。だからこそ俺はあいつと会わない」


『……』


アッシュも自分のせいでヒューゴが、とひどく自分を責めているようだった。アッシュの気持ちも分かるだけに私は何も言えなくなる。

…それに加えて、そもそもの事の始まりは私のせいでもあることが胸に引っかかっていた。




お互いに無言のまま歩き続けて、気付いたら車へと辿り着いていた。


「早かったじゃねえか!ヒューゴとは会えたのかよ?」

「いいや。……はいオッサン」

「なんだよこれ冷てえな……お!酒だー!で、次はどこに行きゃあいいんだ?」

「いや、もういい」


「…何があったんだよ」

「……」

『……』



「2人してだんまりか……ったくよォ」



ロボさんは少し乱暴に瓶の蓋を開けて車を発進させた。

/ 729ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp