ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
「…おーし、全員乗ったな?出発するぞ」
ブルルォオオ
ロボさんは運転席に、アッシュは助手席に、私はその間に座っていた。
「本当はセパレートシートの車にしようと思ってたんだけどよ?アッシュには道案内を頼むとして、さすがに女の子を野郎と雑魚寝させるのは気が進まなくてな…ベンチシートにしたんだ。少し狭いが我慢してくれな」
『ありがとうございます』
「はは!これから長いこと共にするんだ、堅苦しいのはよそうぜ?…ところで、そのヒューゴって男の居場所はわかってんのか?」
私はロボさんに、ケープ・コッドに帰る前に当時お世話になったヒューゴに会いたいとお願いしていた。
『…ううん、昔ロックランドに住んでたってことしかわからなくて。何度か探したこともあったけど結局会えなかったんだ』
「ほぅ?…会って話したいことでもあんのか?」
『ヒューゴはね、命の恩人なの』
「へえーっ!それはまた…よほど思い入れのある男みたいだが、お前会わせちまっていいのかよ?」
「アンタが何を勘違いしてるかしらねえが…そのヒューゴは俺の恩人でもあるんだ」
「……ん?どういうことだ?」
「…別にいいだろ、ここに行ってくれ」
アッシュはダッシュボードに入っていた古そうな地図帳をペラペラと捲りあるページの一部分を指さした。
「…わぁーったよ」
それから1時間半ほどして、アッシュの指定した場所へ辿り着いた。
「…ここでいいのか?地図が古くて自信ねえけど」
『………あ、ここって』
そこは、どことなく見覚えがあった。
「ああ…あの日俺たちが車を降りた場所」
『!』
…そうだ!
ここで降りて、近くの酒屋にお酒のケースを置いて…ヒューゴは私たちをレストランに連れて行ってくれた。
「…車はここ停めておくから、行ってこいよ」
『…ロボさん、ありがとう!』
「……サンクス」
ヒラッと手を振るロボさんに見送られながら私たちは車を降りた。