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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第19章 Cape Cod


《アッシュside》

ショーターとエイジからグリフが撃たれた時のことを聞いた時、ユウコが時折見せる伏せがちな目の意味を知った。

おまえのせいじゃない、誰がどう考えたってそうだろ?

それに俺は、もしあの時撃たれたのがおまえだったらと考えると今でも心臓が張り裂けそうになる。



今俺が、こうして怒りを原動力にでも前に進めているのは兄さんのおかげだ。

失ったのがユウコだったら…きっと俺は迷わず自分の頭を銃で撃ち抜いていたに違いない。



ーー


あれから俺たちは、日がゆっくりと沈んでいくのを何も言わずにただ眺めていた。


8歳のあの日、俺たちは同時に故郷や家族を捨てた。居場所も気持ちのやりどころもない苦しみから無我夢中になって2人で逃げ出し、辿り着いたニューヨーク。そこに溢れていたのは大人の醜さ、汚さ、いやらしさだった。

自由の国だなんて言われているこの国で、俺たちはずっと不自由に生きてきた。本当の自由の意味すら知らずに、ただその自由に憧れて。


振り返ればこれまでに色々なものを失いながらここまで来た気がする。

変わりゆく日々の中で唯一変わらないのは、ユウコが隣にいるということだけだ。

こいつとの関係は昔から変わっていない。それにホッとする時もあれば、ひどくもどかしく感じる時もある。

…きっとこいつは俺とのことでヤキモキすることもないんだろう。そんなセンチメンタルな自分が柄じゃなくて鳥肌が立った。



『……アッシュ、寒い?』

「え?いや……ああ、ちょっとな」

『ふふ、どっちなの?…あ〜あ、さっきまで夕日で綺麗な真っ赤だったのに、もう暗くなっちゃった。私今日ほど夜にならないで欲しいって思ったことないよ』

夜になったら出発ってオッサンが言ってたからか。
俺は冗談交じりに返した。

「…嘘だな。ガキの頃夕方になると帰りたくないってよく泣いてたろ?」

『だってあれは!まだ、一緒にいたかったんだもん!』

「…え?」

ガキの頃の話なのに、バッと思わず顔を見てしまった。ユウコは俯いて夕日のように顔を赤く染めている。

『……今の、忘れて』

なんで、そんな顔…。


『…ちょっと…やだ、見ないでよ』

「…え?……あ、悪ぃ」




俺は何で謝ったんだ?

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