ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第18章 動き出す
『……っ』
階段を登り屋上に出ると、凄まじく綺麗な夕焼けに思わず息が漏れた。
なんて美しいのだろう。
全ての穢れも悪も…善と同様に包まれて、まるで平等にこの世の生命として歓迎されているように感じられた。
私のスキニーの背部に刺さる銃。
懺悔するかのように手元に出してみると、オレンジ色の鮮やかな光に照らされて神秘的に輝いた。
『……あ、そうだ…』
水に濡れてしまったこの銃は手入れをしないと錆が入ってしまう。私は数回ブンブンと強く振り水分をとばした。…あとで分解して整備しなくちゃ。
突然、ふわっと聴き覚えのある声が脳裏に蘇る。
ーー「俺もユウコみたいに銃が扱えたら、もっとボスの役に立てるのになぁ〜!」
『…っ……ス、キップ』
ーー「…ユウコ、いつもアスランと仲良くしてくれてありがとう。これからもあいつのこと宜しく頼んだよ」
『……………グリフ…ッう……っ』
ぽたぽたと銃に涙が落ちる。
もしあの時
私が銃を持っていたら、
ふたりは死なずに済んだかもしれない。
そんな考えに頭が支配される。
私が、もっとアッシュの信用を得られていたら。
『……う……ッ…、ふ……』
私がもっと、しっかりしていたら…
ーーふたりを守れたかもしれない
『…ご…めん……っごめん、ごめん…』
漏れ続ける嗚咽。
涙を拭うことも忘れて銃を抱きしめる。
すると、前方からヒュウッと強い風が吹いて私の体を撫でた。
『……っ!』
今までここには風なんて吹いていなかった。
『…スキップ…?グリフ…?』
私には、ふたりがそこにいるような気がしてなからなかった。
『……そこに、いるの?』
涙で滲んだ燃えるような夕焼けに手を伸ばす。
届かない。
『どこ?…スキップ、グリフ…ねえ、』
吸い込まれるように一歩、一歩足を進めた。
その時、
「…ユウコッ!!!!!」
後ろから腕をグンッと引かれ、そのまま誰かに抱き留められた。