ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第18章 動き出す
《アッシュside》
「………ん、」
光に誘われるように瞼を開くと、そこは見覚えのない部屋だった。
なんだここは…?
「……っく」
体を起こすと、右肩に痛みが走る。
そうか、オーサーの手下に撃たれて…あのあと。
「…おっ、目が覚めたか」
「ここは…?」
「俺の隠れ家さ」
オッサンはショーターの頭を処置している最中だった。
「いよーっ、アッシュ」
俺は辺りを見回してユウコがいないことに気がつく。…あいつはどこだ?確かあいつも俺と一緒にハドソン川へ入ったはずなのに。
「…ほんとはすぐにでも出発したいところだったんだが、ケガ人続出で手当が必要だったんだ。ショーター、沁みるぞ我慢しろよ」
「っ!ぁ…ってェ!」
「……出発?どこへ」
「ケープ・コッド」
……今、なんて?
「おまえとグリフィンの生まれ故郷だ」
「…えっ」
「とりあえずもうマンハッタンにはいられん…遅かれ早かれ俺やイベのこともバレるだろうからな」
「……なぜ俺んちへ」
「グリフィンの残した手紙や写真があるだろう…“バナナフィッシュ”を知ってたのはヤツだけだ」
「………」
魘されるように眠るエイジを横目に俺はドアへと歩き出した。
「日が暮れたら夜逃げだ、体を休めておけよ。
ああ、それと凶暴な山猫娘は…」
…凶暴?
「誰かさんの傷を手当したあとに出ていった、ここのルーフトップにいるんじゃねえかな」
わざとらしくユウコの居場所を口にしたマックス。
俺は部屋を出てルーフトップへの階段を登った。
ーーーーーー
《マックスside》
「…いいのか?また飛び出してムチャをするんじゃ…」
「大丈夫さ。ヤツも、本物のバカじゃない」
「…アッシュのやつ、帰りたくなさそうだったな。ケープコッドの話をした途端ユウコまで顔色悪くして出ていっちまったし」
「…家を飛びだしてきた者にとって、故郷なんて必ずしもいい思い出ばかりじゃないさ」
そういや、アッシュとユウコは幼なじみって言ってたっけか。アッシュの初恋はユウコで、ユウコも…そんな雰囲気か。でも何でだ、2人に甘酸っぱい空気なんて全く感じられない。それどころか、知れば知るほど血なまぐさい。
…まあしばらくすりゃ見えてくる、か。