ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第1章 ケープコッド
「…もうユウコに会えない」
『…なんで?』
「会いたくないから…会えない」
目を合わせようと覗き込んでもフイっと顔を背けられる。
突然会いたくないだなんて言われて、今まで1人で公園で待ち続けてた長い期間の寂しいやら悲しいやら怒りやらの説明出来ない自分でもよくわからない感情が湧き上がった。
『や…やだ!!…っ…そんなこと言わないでっ!』
ちゃんと話したいのに、喉にはツンとした熱を感じて目からは涙がとめどなく溢れる。
そんな私を見て、アスランは大きい目を更に大きくしたかと思うと口をギュッと結んで背を向けて公園の出入口へ行こうとする。
『まって…アスラン!』
追いかけてアスランの左腕を掴む。
「…っ!…僕に触っちゃだめ!!!」
そう言いながら私の右腕を勢いよく振り払う。
どうして?
どうしてそんなに私を拒むの?
そういえばさっきも触れた手を払われた。
でもさっきは私だと確認して少しホッとしたような顔を見せたのに。
嫌われてしまった?
でもそれなら、どうして…
そんなに悲しい顔をしてるの?
お互いが目を合わせたまま、
何も言えないで少しの時間がすぎる
するとアスランが口を開く
「……に……たく……んだ」
『…え?』
「ユウコにだけは嫌われたくないんだ」
アスランはひどく悲しい目をして、
震えた声でそう言うと走り去ってしまった。
私に嫌われたくないってどういうこと?
私がアスランを嫌うなんてありえないのに。
頭の中はぐちゃぐちゃで、
顔も涙でぐちゃぐちゃで、
冷静なんてところとは真逆にいるのに
『…ア、スラン…』
自然と口からこぼれた彼の名は、
静かなものだった。
走り去る彼の背中を咄嗟に追いかけることも出来ず、足から根が生えたように動けなかった。
会えない間に2人とも誕生日を迎えていた。
『言えなかったな、おめでとうって…』