ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第1章 ケープコッド
それからも私は毎日あの公園に向かった。
相変わらずアスランは来なくて、
それでもなんだか家を訪ねる気にはなれなくて、1人で公園で待ち続けた。
パパやママには会えないでいることを言えず、
今日も楽しかったと嘘をつく日々だ。
アスランに会えなくなってしばらくたった日。
変わらず私は公園に向かう。
もう1人にも慣れてきた。
敷地内に足を踏み入れ、いつものブランコに目を向ける。
あのふわっとしたブロンドが見えた。
見間違いかと思ったけど、間違いない。
あの風に優しく揺れる美しい金色は、
アスランだ
もう会えなくなってどれくらい経っただろう
ものすごく久しぶりだ。
心臓が爆発しそう。
私は声をかけることも忘れて急いでまっすぐに駆け寄る。
入口に背を向けるように並ぶブランコにたどり着くと、ブランコのロープを握るアスランの手に勢いよく触れた。
刹那、
反射的に、触れた手を振り払い
バッと振り向いたアスランの目は、
恐怖で満ち、揺れていた。
『…ッ!…ごめんアスラン、驚かせちゃって…!』
「あ…ユウコ…」
そう私を確認すると
自分の両手を膝の上でギュッと握って長い睫毛を伏せた。
『アスラン、やっと会えた。私心配してたんだよ?』
「………」
アスランはチラッと私の目を盗み見ると、また逸らして下を向いてしまう。
『ねぇ、アスラン?どうして全然ここにきてくれなかったの?』
「………」
『また風邪ひいちゃってた?前にアスランが風邪を引いた時にお兄ちゃんが来てくれたんだよ!お見舞いに行ったらアスランとても辛そうで、寝てたし帰ろうとした時名前呼ばれて起きたのかな〜?って見たらまだ寝ててびっくりしたの!』
こんなに長い期間風邪を引いてる訳ないなんて分かってる。
『最近夜は寒いもんね、昨日の夜はあまりに寒かったからパパがホットミルクを作ってく』
「ユウコ、ごめん、僕もう来れない」
なんだか異様な空気に無言のままでは耐えられなくて、反応がなくても喋り続けてた私の言葉をアスランは遮った。
もう来れない?
『……え?アスラン、今…』
【今なんて言ったの?】
と聞こうとして、でも確実に聞こえていた言葉に口が動かなくなった。