ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第18章 動き出す
『っ!…さわらないで!!』
「……おいおい、そう睨むなよ。仲良くしよーぜ、な?」
「そうだぜユウコ。第一このオッサンはアッシュを安全なところに運ぼうとしてただけなんだからよ」
『…………え?』
「あ、やっぱりお前わかってなかった?」
「…はァ?嘘だろ…?このバカは怪我したままあの場に戻ろうとしてたんだぞ!?俺はそれを止めたんだ!逆にそれ以外の理由を教えてくれ!」
『…………』
「いや黙んなし。ちょ…お前、元兵士のガタイのいい男が小さい女の子に地面転がされちゃったんだけど?俺のプライドどうすんだよ?」
『ご…………さい』
「なんつった?」
「…まあオッサン、こいつも謝ってるし」
「いや俺には“さい”しか聞こえなかったぞ!?それに俺はまだ33だ!オッサンじゃあねえ!」
「はあ…もういいだろマックス、大人げないぞ」
「〜〜〜ったく!王子がこれなら姫もこうか…ヨッ!と…どこまで面倒かけやがるんだこのガキャア!」
ロボさんはグイッと引っ張るようにアッシュを担いだ。
「あ〜あ…荒っぽ…先が思いやられるぜ…」
「イベ。すまんが運転してくれ…コイツ殴って右手がイカれちまった。あと、引っ倒されて腰が痛え!」
「あ、ああ」
車まで歩きながら私はそろそろとロボさんの隣に並ぶ。
『…ロ、ロボさん……あの、ごめんなさい…私ついカッとなっちゃって…』
「ついカッとなったなんて可愛さじゃなかったけどな」
『…ごめんなさい』
「ふ、仕方ねえなあ……まあ俺も手荒かったのは事実だ、許してやるよ」
『それと……刑務所ではアッシュのことを、ありがとうございました』
「あー……おう。とりあえず、しばらくは行動を共にさせてもらう。宜しく頼むぜ」
『…は、はい!…っ…』
…これからどうなるんだろう。
まだ先の見えない不安に押しつぶされそうになる。
『…………』
ロボさんが1歩踏み出す度にプラプラと揺れるアッシュの腕にそっと触れる。
アッシュ……
私たちは車に乗り込み嫌という程に見慣れた、代わり映えのしない街を後にした。