ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第18章 動き出す
「…おい、なにしてんだ。早くお前も乗れよ」
「そうだよ、ユウコ。早く後ろに!」
『…私はこのトレーラーに乗らない』
「は?!」
「何言ってるんだよ!」
『エイジ、銃を貸して』
「えっ…」
「ユウコ、お前何を言ってるんだ?アッシュが先で待ってる、早く定位置につかねえと」
『だから早く!…アッシュを掩護するの』
「…つったって…魚市場の中に入れなきゃ意味が無いんだぜ!?」
『…ここのことはアッシュと同じくらい私もよく知ってる!気付かれずに中に入れるよ!』
「だけどよォ!」
「…わかった」
「っおい!エイジ!」
「アッシュとずっと一緒に生きてきたユウコが言うんだ…僕はユウコも信じたい。ユウコ…キミを信じていいんだよね?」
『……うん』
「…頼むよ、信じてる」
「お、おい!」
頷く私にエイジは静かに銃を手渡した。
『…ありがとう。必ずアッシュを守ってみせる。エイジの判断、絶対に悪いものにしないから』
「ああ、じゃあ…また」
「……ッ…あとでな」
ショーターは唇を噛みながらも車を発進させた。その車を見送りながら、私はよく知る土地を駆けた。
アッシュが車体の上から射撃すると言った時はさすがに無茶だと思ったけど、他にディノの隙をつく方法は浮かばない。
何より、アッシュが思いついた作戦だ。
つまり成功する確率はゼロじゃないということ。
『………っは…、』
遠目に3人を乗せた車が緩い検問に差し掛かるのを確認して、私は最も有益な位置にしゃがみこんだ。傍に停車するトラックの影から辺りを見回す。
『……ふぅ』
長く息を吐いて銃身を撫でる。
『……アッシュ…私、守られてばかりだったね。でも私だって、ずっとアッシュを守りたかった…』
ブルルォ…
ゴォォオオオオオ
ショーターの運転するトレーラーが勢いよく走り出した。
…よし。
カチャッ
セーフティーレバーを引いて車の上にいるであろうアッシュを思いその視線の先を見つめた。