ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第18章 動き出す
あれから数日してついに決行日である15日がやってきた。
私たちは位置関係や役回りを何度も確認し備えていた。
柱に隠れ、クラブ・コッドを遠目に眺める。
「…見てくれはなんてこともないレストランだけど、そこがヤツのずるいところさ。これなら誰に目をつけられることもない」
あの頃と何も変わらない。
苦しい思い出に呑み込まれそうになるのを私は頭を振って耐えた。
「この日ばかりは最小限の腹心の部下以外は連れていかない…こわいお兄さん方にウロウロされちゃ客の手前があるからな」
「そうか…それでこの日にしたんだね」
「あの李の力を借りるのはあんまり気が進まないけどな」
「どうして?だってあの人はゴルツィネをよく思ってないから味方してくれるんでしょう?」
「あいつはそんなに甘っちょろいヤツじゃねえよ。ディノと同じくらい食えないヤツさ。…ヤツも俺とジジイのドンパチに興味があるらしい、おそらくヤツのことだからその辺の情報はバッチリ手に入れてるんだろう」
「…だろうな。あの路地でお前が逃げたってことを知らせてきたのも、あの人の部下のひとりだった」
『……』
「…そうなのか、なんだか…なんにも信じられないって感じ…」
「まあそう悪くもないさ。この魚市場へ出入りする中国人の車はまるっきりフリー・パスなんだ、あの李の力でな。…つまり、利用するのはお互いさまってこと
…よし、いくぞ」
アッシュの合図で私たちはトレーラーに向かった。ショーターは運転席に、エイジは助手席に。
私は後部座席へ……向かおうとしているのに、足が動かなくなる。
ーーまた、守られるだけでいいの?
頭のなかで、そう自分が言っていた。
『……っ、』
ーーアッシュを守るために命を賭けるんじゃなかったの?
そうだ。
守られるんじゃなくて、私が守るんだ。
アッシュの優しさに甘えるのはもうおしまい。
私は、ギュッと拳を握った。