ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第17章 ハードな朝
食事を済ませた私たちは、ショーターの淹れてくれたチャイニーズティーを飲みながらそれぞれの身に起きた出来事を話していた。
アッシュが言っていた手続き“は”済んでるってそういう意味だったのか。刑務所を出たあとでチャーリーやイベさんを撒いてアッシュはここにきたんだ。
「お前を襲った相手に心当たりはないんだよな?」
『…うん、顔は見た事ない人だった』
「そうか…俺もなかった」
『えっ?アッシュも見た?』
「あ、特徴を俺たちがアッシュに教えたんだ、な?」
「え?あぁ」
『…アッシュ、私ね。あれは私たちのことを詳しく知る人と繋がってるヤツらだったんだと思う』
「どうして?」
『…あの中の一人は私のハッタリに騙されてくれなかったの』
「ハッタリ?」
『うん、距離を取るために銃を持ってるモーションをしたんだけど、その人がこいつは銃なんて持ってない、持つことを許されてないって言ったんだ。私を探してるみたいだったし、報酬がどうとかも言ってて……』
「……オーサー、か」
『私もそこまでよく知ってる人って他にあまり浮かばなくて…そうなのかな…』
「ああ、ヤツで間違いないだろうな」
『あ、あのさ…』
「なんだよ?」
『私も、やっぱり銃を持ちたい』
「…前にも言ったはずだ。お前に銃は必要ない」
『あるよ…』
「ない」
『あったよ!』
「…ユウコ」
『もし私があの時本当に銃を持っていれば、薬で眠らされたりしなかった!それに…あの男、私が銃を持たせてもらえないのは王子が過保護すぎるからだって言ってた!アッシュにとって…私はそんなにお荷物なの?』
「違う…」
『じゃあ…!』
アッシュはキッと鋭い目付きで私を見た。
「仮に銃を持っていたとして、お前はヤツらを撃てたのか?」
私は一瞬動揺してしまった。
あの時、あの狭い路地で、
私は撃てただろうか。
3人のうち、誰から?
1人仕留めたとして、次はどっち…襲いかかられながら、もう1人目掛けて的確に発砲できた?
どこか1つ判断を、銃撃を失敗すれば…それこそ命すら危うかったかもしれないあの場で、私は撃てたのだろうか。