ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《アッシュside》
これは夢じゃない。
…言ってしまおう。
泣き続けてしゃくりをあげはじめたユウコの髪を梳きながら俺はそう考えていた。
「……ユウコ、」
『ひ…っく』
「本当はこれ…夢じゃ」
『…ぅ…っん』
突然、ユウコの手がキュッと俺の服を掴んだ。
「!」
俺はこれを知ってる。
「……なに、眠くなった?」
『…っ…く…ケホッ…』
「あーあー…まったく、泣きすぎなんだよ。
…泣き虫ユウコ」
自分の口から自然と出たえらく懐かしいワードにハッとした。
『………あ、しゅ?』
「っ…え?……あぁ」
動揺を誤魔化すように背中をトントンと叩く。
『ふ…ふ、…アッシュだ』
「…なにが面白いんだ、この酔っ払い」
『…ん……アス、…』
「あぁ…覚えてるぜこの流れ…。お前、もう俺がなに言ってるか分からないんだろ?」
『……ぅ』
呼吸がだいぶ落ち着いて、こいつの軽い全体重が俺に掛かり始める。
「…ッふ…お前、そんなに泣くほど俺に会いたかったのかよ?」
『…っ……ん』
「…大体、俺がお前を忘れるわけないだろ…?」
『……ん…』
「…その…心配かけて、悪かった…」
『………』
寝たか。
「…“明日”会おうぜ…おやすみ」
俺はユウコが完全に寝たのを確認して、額にキスをした。
ふぅ、と息をついて正面に目を向ける。
あ
「…お前今、やべえって顔したな?さては俺たちがいるの忘れてたろ」
…よくわかったな、ショーター
「ってかエイジ、どうしてお前が泣いてんだよ」
「…ご、め…っ2人が話してるの見てたら…なんか…泣けてきちゃって…ッ」
目元を真っ赤にさせてボロボロと涙を流すエイジ。そういえば、こいつには俺たちのことを話したんだったな。