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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第16章 それでも前へ


『…なに?』

「触ったら消えるか、試してみないとわからないだろ?」

『っ…やだ』

「…そんなに俺に触りたくないってわけ?傷つくな」

『ち、ちがう!』


「じゃあ、…ほら」


『………』


触れ、と広げられた大きな手のひらを見つめる。
それでもなかなか動かない私に、アッシュは溜息混じりにこう言った。


「…久しぶりに会えて嬉しいと思ってるのは、俺だけだった?」


『…っ…』


私は勢いよく首を振った。
涙が溢れて止まらない。



そんなわけない…
アッシュに会えてすごく嬉しい。

それに、夢だとわかっていてもアッシュが私と会えて嬉しいと思ってくれていることが嬉しくて仕方ない。


『…うっ…ぅ』

「ユウコ…早く。涙を拭いたい」


『……っ』


幼い頃、よく涙を拭ってくれた彼。
目の前の人は間違いなく私の記憶の中のアスランだ…。



『………』


私は意を決して震える手を手のひらに近付ける。

そろっと目を見ると、アッシュは小さく頷いた。




ギュッと目を瞑り、最後の距離を縮める。



『……』



トンッ、


私の指先がアッシュの手のひらに触れた。



あれ…?


体温を感じながら徐々に手のひらを重ねていく。






ゆっくりと目を開くと、アッシュは変わらず目の前にいた。




「…どう?俺が見える?」



頷いて、重なった手をギュッと握る。
あたたかい、アッシュの体温。


「ユウコ」


名前を呼ばれたと同時にアッシュのもう片方の手が私の頬を包んだ。そして親指で涙を拭われる。


「…泣くなよ」


『…っ…ん、』


アッシュが私に触れてる、

そう思ったら心がキュッとした。




これは、夢だから…
もう少しのわがままは、

…許される、かな?






起きたら、またちゃんと頑張るから。

もう寂しくても泣いたりしないし、

甘えないでしっかりするから…



だから、今だけ…




この体温に、もっと触れたい。



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