ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第6章 当たり前などこの世には
それからどれくらい経ったか。
アッシュが自力で立てるようになり荒い息も落ち着いた頃、私たちは再び腕を拘束された。
「車が来たぜ」
男が入口までそう伝えに来た。
「さてと…おつきあい願おうかな…ぼっちゃん方」
「…どこへ連れていく気だ」
「川の向こうさ…パパ・ディノの別荘のひとつをお借りするわけだ」
「スキップやユウコには用はないだろう…放してやれ。」
「アッシュ!!」
スキップは焦ったようにアッシュを振り返る。
「そうはいかん。おまえはカーニバルに参加する気はなさそうだから、そちらのぼっちゃんに踊っていただければおまえの気も変わるんじゃないかと思ってな。それにユウコは昔のやつらに…」
「2人を放すんなら、あれの隠し場所を教える…」
マービンの言葉を遮るように言った言葉に私とスキップは目を合わせる。アッシュは何かを隠している。マービンにも、私達にも。
「失礼だが“あれ”とはなんのことだね?」
「とぼけるなよ!わかってんだろ、たしかに俺はヤツからなにか訳の分からん物を受け取ったさ!そんなに欲しけりゃくれてやらあ!ただし、2人を自由にしてからだ!」
“あれ”とはなんだろう?
受け取った…?何を…。
「すまんな…なんのことだかわからんね」
「!!」
すると私たちは、また乱暴に外に向かってグイグイと引きずられる。
「ちくしょう!ブタヤロウ!!」
「さっきは弱って可愛らしかったのにもうそんな減らず口を叩けるほどまでに回復したのか。…車に乗せろ」
その時だった
「うっ!!!」
「うわあ!!!」
突然大きな悲鳴が上がり、あたりは騒然とする。