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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第16章 それでも前へ


《英二side》

あれから僕たちはたわいもない話をしつつ食事をしていた…んだけど、これはちょっとまずいことになった。


「…ユウコ、大丈夫?」

『……っひく』

「しゃっくり出ちゃってるよ…どうしよう。ショーター、キミのせいだからね」

「え、なんで俺!?」

「キミがお酒なんて持ってきたから」

僕の隣のユウコは顔が紅く、なんだかぽやぽやとしていて見るからに酔っている。

「いや俺が飲みたかったから持ってきただけだわ!それに別に無理に飲ませたわけじゃねえだろ」

「それはそうだけどさ…そういえばユウコがお酒を飲んでるところを見るのは初めて会った日以来かも、彼女お酒強くないの?」

「こいつ普段アッシュがいる場でしか酒飲まないからな。飲むモンもあいつが店員に作らせてた弱いヤツだったし…あー…うん、強くないな」

「…へえ、じゃあ今日は珍しいんだ。というか普段弱いのしか飲んでないのに、急に紹興酒やら杏子酒なんて飲んだらそりゃ酔っちゃうよ」

「まぁ、そういう気分の時もあんじゃねえの?」

あっけらかんとするショーター。
…まさかキミ忘れていないだろうね?もうすぐアッシュが帰ってくるかもしれないんだぞ?


「…ユウコ、それやめてこっちにしよう?」

少しでも早く酔いを覚まさせるためにユウコの持つお酒のグラスと水のグラスを交換しようとすると、彼女は首を横に振った。

『ひっく……まだ、のむ』

「え?でもほら、随分酔ってるじゃないか」

『……いいんらもん』

「え?」

『…よいたいから、のんでるの…』


若干呂律の回らないユウコは、そう言いながらグラスをギュッと握って俯いた。

『…きょう、わたしばかで…さいてーだから…っこんなんじゃだめだから…!よってわすれて…またがんばらなくちゃ…』

「……ユウコ?」

『………っ…』

「…昼間のことを言ってるならあれはキミのせいじゃないよ。男たちにいきなり襲われたんだ、仕方な……」

顔を覗き込むとその紅い頬に雫が流れていた。


「…え」

「……あー、エイジ泣かせた」

「は!?え、いや…ユウコ?」



『う…っぐ、

……あ…い…たい…っ』



「…っ」


掠れた声だったけど、僕にはハッキリと聞こえた。





ーー会いたい、と




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