ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
『え…なに?』
「いや…えーっと、お前が男に連れ去られそうになってるところを俺たちが見つけて……そいつらを追っ払って、とりあえずここに連れて来た、みたいな?」
『あ…2人が…助けてくれたんだ』
「ま、まあそういうことになっちまうんかなぁ?へへッ…ッテェ!」
ペシンとショーターを叩いたエイジ。
「まあとにかく、ここは安全だから大丈夫だよ、ユウコが目を覚ましてくれて本当に良かった。…それでショーター、なんだっけ?」
「あぁ…お前を連れ去ろうとした男たちに見覚えは?」
『まったくない、けど…“こいつが山猫のユウコだ”って言って襲われたから私を探していたっぽい雰囲気だった…あぁ、あと“ アッシュ・リンクスに見つかる前に会えてラッキーだった”とも言われたよ?…見つかるも何もまだ刑務所なのにね』
そう言った私に、2人はなんともいえない表情をしていた。
「……そうか、そしたら敵の目星はまだ付けられねえな……まあとにかくお前も目を覚まして無事だったわけだし一安心だぜ。安心したら腹減ったわ…なんか食いもん貰ってくるから待ってな」
そう言ってショーターは部屋を出ていった。
『…エイジ?さっきは本当にごめんね…私てっきり敵だと思って…』
「いいんだよ、僕ももっと早くに声を掛けていれば良かったんだから…!部屋が真っ暗で焦っちゃってさ。さっきまでは点いてた気がしたんだけど…もしかしてキミが切ったの?」
『うん…そう教えられたから』
“リュビームイ”から教わった閉鎖された場所での戦闘術。
ーーまずは相手の視覚を奪うこと。
『…そういえばイベさんは?別の部屋にいるの?』
「へっ?」
『え?今朝イベさんと一緒だったんでしょ?そういえば私が喜ぶって、あれは何の話だったの?』
「あ、…あぁ、うん」
『エイジ?』
「…それはまだ、というか今は言えないんだけど…」
『なに?』
「とにかく!キミはとっても喜ぶはずだから!」
『…?おかしなエイジ』
「……それさっきあいつにも言われたな」
『え?』
「あ!な、なんでもない」
ほどなくしてショーターがガラガラと食べ物や飲み物が大量に乗ったカートを押して戻ってきた。