ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《英二side》
それからどのくらい時間が経ったのか、僕は座ったまま眠ってしまっていた。
「………あれ、」
今何時だろう、うつらうつらしながらそんなことを考えていると突然ぐらりと体が後ろに傾いた。
「っ…!?」
背中を預けていたドアが開けられたらしい。…ということは、ユウコが起きたんだ!
バッと瞬間的に意識がクリアになって、僕は部屋の中を覗いた。
「…ん?」
そこは照明がついていないようで真っ暗だった。
僕は手探りで照明のスイッチを探しONにする。
パッと部屋に明かりが点った、と同時にランプを掲げたユウコが勢いよく飛びかかってきた。
「ヒィッ…うぎゃああーっ!!」
『え…エイ、ジ…!?』
ドアが荒々しく開けられ、間もなくショーターが駆け込んできた。
「エイジ!大丈夫…か?……へ?」
『え!?ショーター!?…え、ねえどういうこと?ここはどこなの?私あの男たちに連れてこられたんじゃなかったの?』
「おぉ…お前まず落ち着け、そしてそのランプを下ろせ…ってもしかしてさっきの悲鳴…まさかお前エイジのこと殴ってねえよな!?」
『な、殴ってない!もうちょっとで殴っちゃうところだったけど…!』
「…おいおい」
「あっ…あの…へ、へいきへいき…僕げんき…だよ」
「随分ヘロヘロだな、大丈夫か?」
「だいじょぶ…ちょっと、びっくりしただけ…」
ランプを手に飛び込んでくるユウコの目は僕の知らない狂暴的な目をしていたから…本当に驚いてしまった。
「…思い出すと腰抜けそう…」
『ご、ごめんなさい…エイジ』
「おい、エイジへっぴり腰じゃねえか…ユウコ、部屋借りるぜ…とりあえずさっきのこと覚えてる範囲で教えてくれ」
ショーターは僕を支えて、ソファに移動した。
『えっと…あ、まってその前に!ここはどこ?大丈夫な場所なの?』
「あぁ、ここは李家の屋敷だから安心していい」
『李家の屋敷って…なんで?』
「匿ってもらってんだよ」
『匿う?…誰を?』
「そんなんアッ」
「あああ〜!!!!」
僕は会話を遮った。
アッシュのことは言っちゃダメ!…と、視線で訴えるとショーターはワリィと笑った。