ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《英二side》
ユウコはいつ目が覚めるだろう。
あれからしばらく部屋にいたけどなんだかやっぱり落ち着かなくて僕はユウコの部屋の前に座り込んでいた。ノックをしても反応がないということは、アッシュはもう部屋を出てるということだよね。
ふと、廊下の先から足音がして顔を上げる。そこにはアッシュとショーターが並んでいた。話を聞くと2人はチャイニーズの親玉に呼ばれていたらしい。
「…エイジはそこで何をしてたんだ?」
「あ、うん…ユウコが目を覚ました時に近くに誰もいないのは不安だろうと思ってここにいたんだ。でもキミが帰ってきたのなら安心だね、部屋に戻ろうかな」
「…いや、俺は少しここを出る」
「えっ?出るって…キミ狙われているんだろ?危ないんじゃ…」
「大丈夫さ」
そういってアッシュは銃を取り出した。
「わっ」
「なぁエイジ」
「うん?」
「もし俺が出ている間にあいつが目を覚ましても、俺のことは何も言わないでいてほしい」
「え?どういう意味?」
「俺がもうムショから出たこと、ユウコにはまだ黙っておいてくれ」
「っな、」
なんで?
一刻も早く伝えてあげたいのに
そんな言葉を口にしようとして慌てて飲み込む。
…キミのことだもんな、きっと
「何か理由があるんだね」
「別に大したことじゃない…けど、顔を合わせて話したいんだ…その、心配かけたみたいだから…更に混乱させたくない」
「っふふ…そっか、わかった。その方がきっとユウコも喜ぶと思うよ」
「……じゃあ、頼む」
アッシュはユウコの部屋のドアを一瞬見て俯くと、背を向け歩き始めた。
「…あんな顔をするくらいなら、どこにも行かないで傍にいてあげればいいのに」
「あいつ、頭冷やしたいんだってさ」
「何かあったの?」
「いや、そこまでは。なんつーか、あの2人のことはまあまあ古い馴染みの俺でもよくわかんねェんだよな〜。正直、どこまで2人のことに首突っ込んで良いのかもわかんなくてよ」
「…うん」
「お前、このあとは?」
「ここにいるよ」
「そっか、俺はさっき路地でとっ捕まえたヤツのことで色々あるから部屋にいる。何かあったら声かけてくれよ」
「ありがとう」
僕は再び膝を抱いて座り込んだ。