ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《アッシュside》
「…ユウコ!」
エイジの声にハッとした。
そして、地面に倒れるユウコが目に入った途端、今度は一気に血の気が引いた。
「……っ」
俺の、せい…?
あの男は確かにそう言っていた。
「………」
「おい!しっかりしろアッシュ!」
ショーターに背中を叩かれ俺はようやく冷静さを取り戻した。
「…あっ…あぁ、…悪い」
エイジに抱き起こされるユウコの脇にしゃがみ、首筋に手を当てる。
……脈も体温も問題ない。
「どうしよう…ユウコ、ユウコ!」
「エイジ大丈夫、気を失っているだけだ」
「ほ、ほんとうに?」
「ああ……とりあえずここから離れた方がいい」
今は銃を持っていない。辺りにヤツらの仲間はいなさそうだが、いつ戻ってくるかわからない。
俺は上着を脱いでユウコの肩に掛け、フードを被せた。
「よし、エイジどきな。俺がこいつを運ぶ」
「あ、うん」
「…いい」
「え?」
「…俺が背負う」
ユウコの腕を掴み体を俺の背中にもたれさせる。少し勢いをつけて立ち上がると、あまりの軽さに前によろけてしまった。
「だ、大丈夫!?」
「……随分痩せたな」
「さっき車で少し話したろ?…ユウコは全然食事をとれていなかったんだ」
「そういや目の下のクマも酷かったよな」
「……」
エイジは俯く俺を下から覗き込んだ。
「アッシュ…ユウコはずっとキミを気にかけていたよ」
「…ああ」
俺もだ
「ずっとキミがどう過ごしているか不安そうだった」
「……あぁ」
…俺もさ
「…ユウコはずっと、
キミに会いたくて仕方なかったはずだよ」
「…っ、」
エイジの言葉にギュッと胸が締め付けられた。
そんなの、
「………俺だって、」
「…ん?」
パッとエイジの顔を見ると、嬉しそうに目を細めて俺を見ていた。
「…っ!…い、いくぞ…」
俺はエイジの視線から逃げるように歩き出した。
「あ、ちょっと!…まったく素直じゃないなぁ」
背中に感じる心地よい体温と、すぐ近くで聞こえるスゥという呼吸。
「……また、会えてよかった」
俺は頬を寄せながら、誰にも聞こえない小さな声でそう呟いた。