ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《アッシュside》
俺がショーターに手を差し出すと、フッと笑ってショーターも拳を出した。その拳同士をぶつけて最後はパンッと手を握り合う。
これが俺たちのハンドシェイクだ。
「ッへへ、そうこなくっちゃ!…俺だってカッコイイとこ見せたいからな。よし、じゃあ早速戻って作戦会議といくか」
「…そういえば、アイツはどこにいる?ショーターが一緒だったんじゃないのか?」
「心配すんなよ、ユウコは小屋にいる」
「ユウコ、突然キミが来たらきっと驚くだろうなぁ…!」
その時、路地の奥の方で何か争っているような声が聞こえた。
ふっと嫌な予感が頭を過ぎる。
…いや、まさかな
「アッシュ?…どうしたの」
「エイジお前無粋なこと言うなァ?…こいつはユウコに早く会……って、おいアッシュ!」
俺は妙な胸騒ぎを拭いきれず、小屋の方向へ走った。
迷路のような路地の角を曲がると、
「…っ!」
最悪の光景が目に入ってきた。
「…ユウコ、」
意識がないであろう力の抜けたユウコは男に背後から抱えられ、どこかに連れ去られる寸前だった。
「…っ…ユウコーッ!!」
男たちが一斉に俺を見る。
「クソッ……アッシュ・リンクス…!」
「…やべぇ、本物だ…」
「こ、こっち来るぞ…どうする…?!」
抱える男がナイフをユウコに突き付けた。
それを見た途端、一気に頭に血が登ってグラグラと沸騰するような感覚がした。
「ッ…おい…そいつから手を放せ…」
「アッシュ…っ…は?ユウコ!?…なんでアイツがここにいんだよ!」
「…う、うそ…ユウコ…?」
「ぉ…っおいおい…これはお前のせいなんだぜ?アッシュ・リンクス…。このお姫様は俺たち相手によく闘った…銃のハッタリが、もし本物だったら…上手いこと逃げられてたかもしれ」
「…聞こえなかったか?
………放せ」
「「!!!」」
ドサッとユウコを手放した男ともう1人は後ずさるように逃げていった。残った1人に距離を詰める。
「お前も失せろ」
「…っ…」
「…死にたいのか?」
「…ひ、…っ!!」
やたら饒舌だった男も這うように走り去っていった。