ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《アッシュside》
角を曲がりエイジの背を押して振り返ると、案の定1人の男が慌てたように駆けてきた。
「っ!」
「……俺たちに何か用?」
「…チッ」
その男はナイフを構え、1歩踏み込んでくる。
…見たことのないやつだな
俺は胸ぐらを掴み、膝でみぞおちを蹴りあげた。
「ぐ、わあッ!!」
「……」
落としたナイフを遠ざける。
「…ボスは誰だ?オーサーか…ゴルツィネファミリーの誰かか」
「…し、知らねえ!俺はただ頼まれただけだ…っ!」
頼まれただと?
すると、視界の先に見知ったやつが現れた。
「そっから先は俺たちが引き受けるぜ。…なまっちゃいなかったな、さすがだぜ」
ショーターだ。
「ネズミは俺たちの方でドロを吐かせる。まあたいてい見当はつくが……おかえり、待ってたぜアッシュ」
「ま、待ってくれ!!たのむ…殺さないでくれ!なんでも話すから!」
「……聞くだけ聞いたら放してやれよ」
「また仏心か?お前この期に及んでまだそんな甘っちょろいこと…」
「そうじゃない。ザコを殺してもなんにもならない…揉め事が大きくなるだけだ」
「けっこうじゃねえか!このさい一気にカタをつけようぜ!もうあのオーサーのヤツにこれ以上でけえツラをさすわけにはいかねえ」
「なあ…俺の兄貴の遺体がどうなったか知らないか?」
エイジとショーターは顔を見合わせて顔を顰めた。
「……それが、まだ検死官事務所なんだよ…身元引き受け人がいないから」
「俺がこうなった以上、共同墓地に放り込まれんだろうな…」
「………」
「手を引いてくれ、ショーター。これは俺ひとりでカタをつける」
「な…っ!なに寝ぼけたことを言ってやがる!お前ひとりで何ができるよ!?」
「これは俺の問題だ、お前には関係ないだろう」
「バカヤロウ!俺の問題でもあるんだ!いいか?俺の仲間はもう何人もオーサーの一味に殺られてるんだぜ!…俺だってこのザマさ!いつまでもコソコソ逃げ回ってるなんてもうゴメンだ!!」
「……」
「だいたいお前ひとりじゃ殺されるのがオチだぞ!そんなのは犬死ってんだ!…ボスがそんなアホじゃ、死んだ仲間やスキップが浮かばれねえぜ!」
…言ってくれるじゃねえか
「…はぁ、OKわかったよ…手を貸してくれ、ショーター」