ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
「……おい、ユウコ」
『……っ…ん』
「そろそろ起きとけ」
『んン……あ、れ……?』
心地よい体温を感じ、ふと目を開けて驚いた。
私はショーターの腕の中で寝ていたらしい。
『…っえ』
「言っておくが、俺は何もしてねぇし悪くねえぞ!」
『うん…温かかった、ありがとう』
「…いや…ありがとうってお前、俺が言うのもアレだけど…もう少し危機感持った方が良いんじゃねえの?」
『…ショーターじゃなかったら2人の時に寝たりしないもん』
「そう、なんだろうけどよ……お前さ…大丈夫か?」
『え?』
「その、さっきの…魘される…みたいな?よくあんのか?」
『あ…うそ』
「最初は普通に俺に寄っかかって寝てたんだけどよ、急に呼吸荒くなって…泣き出したっつか…」
『っ……うるさかった?ごめんね?』
「違う、そうじゃねえよ…まぁ驚いたけど」
『…もしかして、なんか言ってた?』
「あー……」
『ショーター?』
「………アスラン助けて、って」
『…っ!…………はは』
すると、ショーターに頬をギュッと摘まれた。
「バカ…無理して笑うなよ」
『……ショーターは優しいね』
「当たり前だろ?…パパだからな」
『…パパは何も聞かないでいてくれるの?』
「お前の話したい時に聞かせてくれたらそれでいい」
『こうやって女の子を落としてきたんだ』
「…落ちないのはお前くらいさ」
ずっと誰かさんに夢中だもんな、と笑うショーター。
『…絶対に叶わないってわかってるのにね』
「……そんなのわからないだろ?」
『1番近くにいたはずなのに、気が付いたら1番遠くなっちゃったんだよ?…わかるよ』
こんなことをショーターに話すのは初めてだな。きっとさっきの夢のせいでまだ冷静になれていないんだ。
「なに?アッシュ・リンクスにしばらく会えてないからってユウコ・リンクスは弱気になっちまったのか?」
『ち、…ちが』
「はァ、山猫の番が聞いて呆れるぜ」
『好きで呼ばれてるんじゃないもん!』
「じゃあお前はさ、他の男を好きになれるわけ?」
『…え?』
「他の男と番になれるのかって聞いてンの」
『他の男…?』
「例えば〜…俺、とか?」