ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第16章 それでも前へ
《アッシュside》
「脅されて逃げ場を失って、無理やりにさせられた行為だったはずだったのに…ッ…俺はあの時、あいつを傷つけることのできる状態だったんだ…最低だろ…?」
「……っ」
エイジはどんな顔をして俺の話を聞いているんだろう。
俺は途中から顔を見れなくなって、窓の外を眺めたり腕で目元を隠したりしながら出来るだけ淡々と話していた。
「それも、あの一度だけじゃない…」
あの次の15日からはユウコも客を取らされるようになった。金に糸目をつけない、ディノの言い値を払える上客にだけ…でもあいつはひどく怯えて、濡れるどころか喘ぎ声ひとつ出せなかったらしい。
それを知ったタコは俺に『ユウコの体にセックスが快感であることを覚えさせろ』と命令した。それがユウコの為だ、そうしないとユウコの体は乱暴な男どもに今にボロボロにされてしまう、と。
「…クソみたいな命令に、ガキの俺は…逆らえなかった」
だから俺は…
ディノやその手下が見張る前で何度も何度もユウコの敏感な部分に触れ、そして腰を打ちつけた。
客にはスキンの使用を義務付けるようになったのに、何故か俺とユウコのセックスにはそれが許されなかった。今になって考えてみれば、俺の体にも快感を強く植え付けようとしていたのだろう。
終わるとヤツらは、意識を飛ばしたユウコの中から流れる精液を確認して避妊薬を俺に手渡すと部屋を出ていった。また日が経って…命令を合図に当たり前のように体を重ねる。
それはまるで人間の手によって意図的に交尾をさせられている意思のない動物のようだった。
「……ッ、」
嗚咽が聞こえて目を向けるとエイジは泣いていた。